森の掟

J-POPやメタルやフェスや音楽番組なんかの批評(という名の無益な墓掘り行為)

音楽好きの親にオススメしたい、曲がいいキッズむけ映画×6

うちの子、4月から保育園が休園になってしまって、1ヶ月ずっと家にいる。

 

5歳と2歳の男児という、そりゃもうじっとしてることが絶対不可能なお年頃なので、親としてはあの手この手を駆使して巣ごもりに協力いただいている次第。

 

巣ごもりをしのぐ屋内の娯楽がいろいろあるなかで、やっぱりどうしても王道は動画コンテンツですよね。

5歳のほうはもうリモコンの操作を覚えてしまって、いっちょまえに音声入力なんかも駆使して、自分が観たい動画をうまいこと見つけられるようになってきてるし。ほっといたらもう誇張じゃなく一日中ずっとテレビの前にいる。

 

じゃあどんな動画を鑑賞させるかっていう話なんだけど、どうせなら親も一緒に楽しみたいじゃないですか。

 

特にこちとら音楽好きの親としては、どうせなら音楽がいい映画なんかを観といてもらいたい。映画を観ていない時間でも、ドライブ中なんかに「あの映画のあの曲を流してくれ」とリクエストが入ったりするので、そこで流れる曲は親も好きな曲だとありがたいんだよな。

 

それが戦隊モノの曲とかだったら、そりゃそういうのが好きな親もいるけど、自分としては結構キツいものがあるわけで。

 

そんな思いを抱いた音楽好きの親御さんって多いと思う(音楽フェスの子連れ率の高さをみてる限り)ので、今日はうちの親子ともにハマった、音楽がいいキッズむけ映画をご紹介します。

 

ミニオンズ』(2015年)

 

黄色いミニオンのキャラでおなじみの怪盗グルーシリーズは、かのファレル・ウィリアムスが主題歌を提供しており、特に第2作「怪盗グルーのミニオン危機一発」の主題歌「ハッピー」は世界中で大ヒットした。

既存曲の使い方も気が効いてるんだけど、音楽好きに特にオススメなのが、シリーズのスピンオフ的な位置づけの「ミニオンズ」。

怪盗グルーシリーズの前日譚となるこの作品は、1968年のニューヨークとロンドンがおもな舞台。ということで、劇中では60年代ロックの定番どころが流れまくる。

 

タートルズ「ハッピー・トゥゲザー」

ローリング・ストーンズ「19回目の神経衰弱」

スペンサー・デイヴィス・グループ「アイム・ア・マン」

ドアーズ「ブレイク・オン・スルー」

ミュージカル「ヘアー」より「ヘアー」

キンクス「ユー・リアリー・ガット・ミー」

ザ・フー「マイ・ジェネレーション」

ビートルズレヴォリューション」

 

とくに「アイム・ア・マン」はパトカーと銀行強盗のカーチェイスシーンで、「ユー・リアリー・ガット・ミー」は、エリザベス女王ミニオンたちが王冠を奪い合う馬車チェイスのシーンでカッコよく使われており、長男は3歳の頃から「ゆりりがみ!」と口ずさんでいた。

 

ミニオンたちが敵から逃れてロンドンの下水道から地上にでたところがちょうどアビーロードで、横断してきたビートルズ(顔は映らないけど1人だけ裸足だったりで明らかにそうとわかる演出)に踏みつけられるとか、ニヤリとさせるギャグも満載。

 

怪盗グルーのミニオン大脱走』(2017年)

同じく怪盗グルーシリーズからもう一作、シリーズ第3作目となるこちらをオススメ。 


悪役が80年代に一斉を風靡した元子役スターという設定で、そいつが気分を盛り上げるために80年代ポップスの定番どころをこれでもかとカセットテープで流しまくるんですよ。

マイケル・ジャクソン「BAD」

ヴァン・ヘイレン「ジャンプ」

a-ha「テイク・オン・ミー」

ネーナ「ロックバルーンは99」

オリビア・ニュートン・ジョン「フィジカル」

マドンナ「イントゥ・ザ・グルーヴ」

 

まさにMTVヒッツという感じなので、この映画をきっかけに曲に興味をもったら、YoutubeでそれぞれのPVをみせてあげるのもオススメ。

やっぱこのあたりの曲って時代を超えてキャッチーだし映像もアイデアに満ちてるしで、子供の心も一瞬でつかむよね。

うちの長男はマイケル・ジャクソンとa-haは一時期どハマリしていた。

 

映画としては、80年代の過去の栄光にこだわり続ける哀れな悪役のBGMとしてこれらの曲が機能しており、キャッチーな反面もの悲しくも聴こえてくる。非常によくできた使い方。

 

『ペット』(2016年)

怪盗グルーシリーズと同じくイルミネーション製作の『ペット』は、日本語吹き替え版をバナナマンの2人が担当したことでも話題。

飼い主がいない間のペットは何をしているかというと…っていう好奇心をそそるおはなし。たとえばクラシック音楽好きの飼い主が出かけるやいなや、ペットの犬が自分の好みであるメタルを爆音で流してヘドバンしまくっていたり。

 

予告編にはベースメント・ジャックスの「ドゥ・ユア・シング」が使われてるし、本編では冒頭からテイラー・スウィフト「ウェルカム・トゥ・ニューヨーク」が流れ、犬たちが散歩するシーンでは「ステイン・アライブ」、孤独な猛禽類が友達を求めるシーンでクイーンの「マイ・ベスト・フレンド」が流れるなど、シーンに応じた適材適所な選曲が光ってる。

 

特に終盤近く、犬とウサギが仲間を救うためバスを運転してブルックリン橋を爆走するシーンで流れるビースティ・ボーイズの「ノー・スリープ・ティル・ブルックリン」のハマりっぷり。

 

そしてエンディングでそれぞれの家路に帰っていくペットたちの姿をバックに流れるのが、先日惜しくも亡くなったビル・ウィザースの「ラブリー・デイ」。大冒険の余韻を感じつつ日常に戻っていく感じにものすごくマッチしていて、何度みても幸せな気持ちになれる。

 

『レゴ®ムービー2』(2019年)

レゴでできたキャラクターがCGアニメで大活躍する『レゴ®ムービー』の続編。

2014年の前作は、その手があったか!という衝撃のメタ展開と、その展開が生み出すラストで、たくさんの大人たちを感動させた知る人ぞ知る作品になった。

特に、かつてレゴさえあれば一人で何時間でも遊べた子供であり、かつ乱暴な弟がいて、かつ現在子育て中っていうわたしのような人間にはですね、本当に本当にオススメ。

 

続編である今作は、前作の展開をさらに発展させたストーリーになってて、ギャグのキレも引き続き最高だし、こちらも映画としてまずふつうにオススメ。

それでいて、音楽好きの親にとってはさらに楽しめるようになってる。

 

予告編ではビースティ・ボーイズの「インターギャラクティック」が流れるし、途中でワイルドな仲間キャラが合流するシーンではモトリー・クルー「キックスタートマイ・ハート」が流れるし、まあご機嫌。

 

そしてなんといっても、エンドロールで流れるのが、ベックがこの映画のために書き下ろした新曲。クールなトラックにナンセンスな言葉遊びの歌詞。

この映画むけってことで肩の力が抜けて風通しのいい佳曲が生まれたのかなって感じ。

 

『スポンジ・ボブ/スクエアパンツ ザ・ムービー』(2004年)

スポンジボブ」といえば、キャラクターはかわいいけど内容はかなりブラックでグロいギャグアニメ。

2004年にはじめての劇場版が製作されたんだけど、エンドロールで突然に米国オルタナティブシーンの大物の楽曲が立て続けに流れてびっくりする。

ウィーン「オーシャン・マン」

フレーミング・リップスSpongebob And Patrick Confront The Psychic Wall Of Energy」

ウィルコ「ジャスト・ア・キッド」

 

特にフレーミング・リップスの曲は、タイトルもそうだけど歌詞も映画のストーリーに即して、登場人物のスポンジボブとパトリックに語りかけるような内容。

「ヨシミ・バトルズ・ザ・ピンク・ロボッツ」のあの感じにも通じる、フレーミング・リップスらしい曲になっている。

 

あと、トゥイステッド・シスターの「アイ・ウォナ・ロック」の替え唄を歌ってギターを弾きまくるシーンもあって、かつてメタル少年少女だった親の血が騒ぎます。

 

しかし今回紹介してる他の映画でもそうだけど、21世紀のアメリカ映画において、80年代のハードロック/ヘヴィメタルは特別な記号になってる。

特にキッズ映画に欠かせない、無軌道で暴力的で騒々しいノリが、80年代のハードロック/ヘヴィメタルとの親和性が抜群ってことなんだろう。

 

その手の記号的シーンを観すぎたせいで、うちの子たちにとってギターは最終的に破壊するものってことになってる。

 

バンブルビー』(2019年)

2007年に第一作目が公開されたトランスフォーマーシリーズのスピンオフ。

トランスフォーマーといえばもともと日本生まれの変形ロボット玩具なんだけど、ハリウッドが細密なCGで映画化したもので、人気シリーズ化した。

 

車や飛行機に変形するロボット生命体が大戦争を繰り広げるハードな本編に対し、スピンオフとなる今作は、1987年のアメリカの18歳の少女を主人公に据えた成長譚になっている。

 

今作では、敵にやられて音声が出なくなったバンブルビーは、カーラジオやカセットテープの歌の歌詞で会話することを覚える。主人公はスミスをはじめとするニューウェーブ周辺のロックを愛聴しており、劇中で流れまくる。

スミス「ビックマウス・ストライクス・アゲイン」

スミス「ガールフレンド・イン・ア・コーマ」

デュラン・デュラン「セイブ・ア・プレイヤー」

ティアーズ・フォー・フィアーズ 「ルール・ザ・ワールド」

シンプル・マインズ「ドント・ユー」

ボン・ジョヴィ「夜明けのランナウェイ」

この数シーン後にロボット同士の壮絶な潰しあいが出てくるとは思えない、甘酸っぱいボーイ・ミーツ・ガール場面。

 

世界的にカセットテープに注目が集まっていた2010年代後半、映画の中でもカセットテープやウォークマンが効果的に使われるトレンドがあった。

ベイビー・ドライバー』や『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』なんかが代表的。

まあこの2作は内容的にキッズも大丈夫とは言いがたいので、今回の記事では扱いませんが。

 

まとめ

こうしてみると、ここ数年のハリウッドのファミリー向け映画にはある勝ちパターンというかセオリーがあるっぽいのが見えてくる。

すなわち、親世代が反応する80〜90年代の曲を効果的に使い、子供の心はハードロック/ヘヴィメタルを使った破壊的なバトルとかカーチェイスシーンでガッチリつかみ、親は親目線で観ることができてちゃんと感動できるように脚本が練られていること。

これやられちゃうと、うちみたいな家族はテキメンにもってかれるね。

 

おかげで親子で同じ映画と音楽に夢中になれて、円満に巣ごもり生活を過ごせてます。

今回挙げた作品はほぼ常に大手動画配信サイトで観ることができるので、みなさまのご家庭でもぜひ。

この映画も!っていう情報提供もお待ちしてます。

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