2022年10月~12月に放送されたアニメ『チェンソーマン』。
米津玄師の主題歌『KICK BACK』や、週替りで様々なアーティストが手がけたエンディングなど、音楽面のクオリティの高さでも話題になった。
- Vaundy
- Aimer
- ずっと真夜中でいいのに。
- マキシマムザホルモン
- syudou
- 女王蜂
などなど、令和の深夜アニメのコア層にしっかり訴求しつつもエッジの効いた、かなり気合の入った豪華ラインナップになっていた。
syudou曲の「うっせえわ」感やano曲の「LOVEずっきゅん」感にニヤニヤしつつも、各アーティストが『チェンソーマン』の世界観をそれぞれに咀嚼した作品に仕上げていて、こんなに毎週エンディングが楽しみなアニメははじめてだった。
2022年12月で終わった1期(全12話)では、原作の5巻までがアニメ化されていたので、おそらく遠からず2期も制作されることでしょう。
そしたらエンディングは誰がやったらおもしろいだろう?と想像するのはそれだけでもめちゃ楽しいんだけど、今回はそこにもうひとひねり加えてみたい。
というのも、主人公デンジたちが所属する公安警察のあの制服が、90年代のいろんなものを想起させるんですよね。
アニメのオープニングの元ネタになっていることがちょっと前に話題になった映画『レザボア・ドッグス』は、1991年に公開された。
あとネオモッズとかガレージ・パンク・リバイバルなどもあり、90年代ってあの公安警察みたいな細身の黒スーツが流行ったんだよね。
で、調べてみたらそもそも『チェンソーマン』って1997年が舞台なんだって。
ってことで今回は、アニメ第2期のエンディングテーマを1997年のアーティストが担当したら?っていう妄想企画です!
全12話分考えてみた!
THEE MICHELLE GUN ELEPHANT(ミッシェル・ガン・エレファント)
1996年にデビューしたミッシェル・ガン・エレファントは、ガレージパンクやモッズ、パブロックといったUKロックの要素をカッコよく取り入れ、またたく間に90年代後半を代表するロックバンドになった。
1998年に開催された第2回フジロック・フェスティバルでは、メインステージに抜擢された数少ない日本のバンドのひとつだった。
スタイリッシュな細身の黒スーツ、歪んでやさぐれた音楽性、なおかつ若干の非日常感と、『チェンソーマン』の世界観と共通する部分が非常に多い。
電気グルーヴ
『チェンソーマン』以上にハードコアな描写が話題になったNetflixの『DEVILMAN crybaby』の主題歌を手がけた電気グルーヴ。
あと『墓場鬼太郎』もあったし、大人向けアニメとの相性がすごくいい。
1997年の電気グルーヴは、傑作アルバム『A』をリリースし、音楽的にも売り上げ的にもノリにノっていた時期。
『チェンソーマン』に楽曲提供するとしたら、キックが歪みまくったガバ路線が似合うと思います。
Cornelius(コーネリアス)
1997年のコーネリアスは『FANTASMA』をリリースして音楽性が大きく深化したんだけど、『チェンソーマン』的にはその前の『69/96』のヘヴィメタリックで悪魔的なイメージがぴったりくる。
『69/96』の頃のコーネリアスは、後にいじめ問題で炎上することにも繋がってくる、90年代の悪趣味カルチャーに浸かっていたんだけど、『チェンソーマン』ってすごく当時の匂いがするんだよね。
BUCK-TICK(バクチク)
1987年のメジャーデビュー以降、一度もメンバーチェンジせず活動休止もせずに現役で活躍しているBUCK-TICK。
初期の頃から一貫している「病み」や「狂気」のモチーフは、ヴィジュアル系というジャンルの形成に多大なる影響を及ぼした。
悪魔崇拝的なこの曲なんて、映像ごとそのまま『チェンソーマン』に使える。
HIDE
Xのサイケデリックで狂気な面を代表していたHIDEは、1994年のソロデビュー以降、さらにその路線を推し進める。
H・R・ギーガーがデザインしたソロアルバムの仮面だったり、テレビ出演時のパフォーマンスなどのヴィジュアルは、『チェンソーマン』に直接的にも間接的にも影響を与えていそう。
楽曲面ではこのあたりとかがめっちゃ『チェンソーマン』的なんだよな。
BUDDHA BRAND(ブッダ・ブランド)
1997年といえば、日本語ラップの伝説のイベント「さんぴんCAMP」の翌年であり、キングギドラやシャカゾンビやYOU THE ROCK★らが続々とアルバムをリリースしていた時期。
中でも、アメリカ仕込みのフロウとトラックのセンスがすごかったのがBUDDHA BRAND。
病んでる狂ってるということをことさら強調するあたり、『チェンソーマン』的でもあるなと。
悪魔みたいなやつが出てくるMVもあるし。
人間椅子
バンドブーム期のデビュー以来ずっと、江戸川乱歩の怪奇や東北地方の暗さといったモチーフを、ブラック・サバス直系のドゥームなサウンドで歌い続けてきた人間椅子。
1997年頃は一時的にインディーズに戻っていたが、すぐに再メジャーデビューを果たす。
人間椅子は徹底して和の世界観なので、『チェンソーマン』の悪魔とはちょっと違うように見えるけど、この曲なんかは和洋の壁を超えた禍々しさに満ちている。
サイケアウツ
ジャングル、ドラムンベース、2STEPといったダンスミュージックに、アニメやゲーム音楽をサンプリングするという独自の音楽性で、1990年代の関西で異彩を放っていたサイケアウツ。
今でこそナードコアは一般的な存在になっているけど、当時アニメやゲームといったオタクカルチャーはクラブに行くような人種からは蔑まれており、サイケアウツは時代を先取りしまくっていたと言える。
サイケアウツのハイパーなドラムンベースはすごく『チェンソーマン』の世界観に似合うので、ぜひ抜擢されてほしい。
SEAGULL SCREAMING KISS HER KISS HER(シーガル・スクリーミング・キス・ハー・キス・ハー)
小山田圭吾のトラットリア・レーベルからリリースしていたバンド。
フロントマン日暮愛葉の日本人離れしたやさぐれ感がすごくかっこいいんだけど、どことなく『チェンソーマン』の、特に姫野っぽいなと思って。
煙草が似合うところとか。
ゆらゆら帝国
1997年のゆら帝は、メジャーデビュー直前。
初期のサイケデリックでガレージな音楽性や、自分の中に悪魔的な何かが入り込んでいるような感覚って、ものすごく『チェンソーマン』っぽい。
「人間やめときな」「悪魔が僕を」「夜行性の生き物3匹」など、タイトルを列挙してみるだけでも伝わるでしょう。
特にこのあたりの曲なんてぴったりだと思うんですよね。
SUPER JUNKY MONKEY(スーパー・ジャンキー・モンキー)
1990年代に数多く存在したいわゆるミクスチャー系のバンドからは、SUPER JUNKY MONKEYを取り上げたい。
ハードコアパンクやスラッシュメタルに近いハードな音楽性ってこともあり、メンバー全員女性ながらもモッシュやダイブが当たり前の激しいライブを繰り広げていた。
若干のSFチックな歌詞も『チェンソーマン』っぽいと言われたらそんな感じしませんか。
Blankey Jet City(ブランキー・ジェット・シティ)
前述の人間椅子と同じくバンドブーム期にデビューし、アルバムごとに凄味を増していったブランキー。
1998年の第2回フジロック・フェスティバルではメインステージに登場している。
アニメのタイアップに乗ってくる様が全く想像できないけれど、死の匂いがするヒリヒリした感覚とかピュアな不良性がデンジっぽい気がする。
まとめ
こうして並べてみると、1997年の音楽シーンの豊かさ&幅広さ&好き放題っぷりがよくわかる。
しかもここに挙げたアーティストのほとんどがメジャーでそこそこ売れていたわけで、CDバブルで生まれた経済的な余裕がこのあたりのアーティストに還元されるっていう好循環があったんだよな。
なお、この翌年である1998年には、椎名林檎、ナンバーガール、くるり、宇多田ヒカル、バンプオブチキン、キリンジ、アジカン、スーパーカーらが登場してくる。
この98年以降のアーティストが現代J-POP、邦ロックに与えた影響がとにかく大きいので、その前年までのシーンの雰囲気ってどうしても相対的に語られてないんだけど、忘れ去られるには惜しいカッコいい人たちがたくさんいたのである。
そして、やっぱり『チェンソーマン』の世界観との親和性が高いアーティストが多いし、1997年が作品の舞台に設定されている理由がなんとなくわかった気がする。