映画「イエスタデイ」が公開されたり、アルバム『アビイ・ロード』の最新リマスター版がリリースされたりと、久しぶりにビートルズが話題になった2019年秋。
そして来年(2020年)には解散から50年という節目を迎える。
これから世の中にいろんなビートルズ企画が出回ることであろうが、これは他ではやらないだろうという、ビートルズの日本語カバーの世界という切り口はいかがでしょうか。
ご存じの通りオリジナルの歌詞によるカバーはめちゃめちゃ多く、今も増え続けているんだけど、実は日本語の歌詞で歌われているものもあったりする。
現在では権利者の意向で歌詞を変えてリリースすることはNGになっているらしいので、新たにビートルズの日本語カバーがリリースされる可能性は限りなく低いんだけど、過去にはバラエティに富んだバージョンがたくさん存在した。
原曲がリリースされた数ヶ月語に出たというリアルタイムのものから、新しいものでは90年代まで。原曲に忠実なアレンジから、音頭まで。
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第10位 近藤真彦「抱きしめたい」
マッチこと近藤真彦の17歳の誕生日を記念してリリースされた企画版「17バースデー」に収録された、「抱きしめたい(I want to hold your hand)」の日本語カバー。
自分が生まれた1964年にヒット曲したとして「抱きしめたい」をカバーしたという趣向である。
日本語詞は、原曲がリリースされた直後に出たスリーファンキーズによる日本語カバーバージョンと同じもの。
書いたのは、60年代前半に数々の日本語カバーの歌詞を手がけた漣健児。
当時、歌手デビュー2年目のマッチ。この年の「ギンギラギンにさりげなく」でレコード大賞新人賞を受賞するという、フレッシュな盛り。
ビートルズへの興味やリスペクトは正直特にありませんっていう若いノリがすがすがしい。
CDやストリーミングにはなっていないので、ほしい方はがんばってレコードを探してみてください。特に高値にはなっていないはず。
第9位 田中星児「オブラディ・オブラダ」
「ビューティフル・サンデー」の大ヒットでも有名な、NHK「おかあさんといっしょ」の初代うたのおにいさん。
「オブラディ・オブラダ」は、1974年にフォーリーブスがNHK「みんなのうた」で取り上げて以来、日本ではキッズ向けソングとしての性格が強い。
最近では杉浦太陽もカバーしてたりするんだけど、カリビアンな雰囲気がもっとも出てる田中星児バージョンで。
第8位 ガロ「ビコーズ」
1972年の「学生街の喫茶店」が世代を代表するヒット曲となったフォークグループ、ガロ。
グループサウンズからフォークへの時代の変わり目にリリースされた「学生街の喫茶店」は、タイガースへの楽曲提供で名を挙げたすぎやまこういちが作曲、編曲は スパイダースの大野克夫というGS人脈。
セカンド・アルバム『GARO2』において、『アビイ・ロード』のB面を美麗に飾る「ビコーズ」を、本家に負けじとカバー。
第7位 HIS「アンド・アイ・ラヴ・ハー」
細野晴臣と忌野清志郎と坂本冬美という、ジャンルを超えた異色の3人によって結成されたユニット、HIS(ほその・いまわの・さかもとのイニシャル)。
学生服に身を包んだ細野と忌野、そしてセーラー服の坂本冬美という衣装も印象的だったけど、細野晴臣っていう時代の最先端を行ってるような人が、演歌っていうダサいおじさんの音楽をやってる坂本冬美と組んだっていうことに当時かなりびっくりさせられたんだった。
1991年にリリースされた唯一のアルバム『日本の人』において、「アンド・アイ・ラヴ・ハー」を日本語でカバーしている。
日本語詞を書いたのは忌野清志郎。
第6位 大場久美子「Sgt.Pepper's Lonely Hearts Club Band」
1978年の「コメットさん」役で大ブレイクしトップアイドルとなった「一億人の妹」大場久美子。
「スプリング・サンバ」など初期のいくつかのシングル曲は、ロリータ感のある歌いっぷりとファンキーな編曲で今も人気が高い。
1979年にリリースされたベスト盤『Kumikoアンソロジー』の冒頭を飾っているのが、破壊力抜群の「Sgt.Pepper's Lonely Hearts Club Band」および「With a Little Help From My Friends」の日本語カバー。そう、本家と同じ流れ。
原曲にないイントロに続いて、分厚いコーラスが特徴的な「Sgt.Pepper's〜」がはじまり、続いて「With a Little Help〜」からは大幅にアレンジが変わり、さらにもう一度「Sgt.Pepper's〜」に戻ってくるんだけど大場久美子はどっかに行ってしまいコーラス隊が最後まで歌い切るっていう構成。
ビートルズのカバーの話題になったときによくネタとして出てくるので、ご存じの方も多いだろうか。
第5位 小山ルミ「カム・トゥゲザー」
和モノDJが血眼になって探してるキラーチューン「あなたに負けたの」「グット,,がまんして!!」などで知られる小山ルミ。
さらにはカルト歌謡曲の横綱「スナッキーで踊ろう」のバックコーラスをつとめるスナッキーガールズの一員でもある。
そんな彼女が1973年にリリースしたのが、全曲ビートルズの日本語カバーという、その名も「ビートルズを歌う」というアルバム。
どの曲もすばらしいんだけど、特に原曲から遠く離れた日本語詞がイカす「カム・トゥゲザー」を選びたい。ヒッピーの彼氏を自慢するっていうオリジナルな歌詞を書いたのは千家和也。
第4位 東京ビートルズ「キャント・バイ・ミー・ラブ」
ビートルズの日本語カバーの話になると外せないのが、この東京ビートルズ。
「抱きしめたい」がアメリカのチャートで1位になったというニュースが日本にも伝わり、どうやらビートルズっていうのが人気らしいぞって話になるやいなや、嗅覚の鋭い芸能事務所によって結成されたグループ。
前述の漣健児による日本語詞でビートルズの日本語カバーを4曲リリースしている。
その中でも「買いたいときにゃ金出しゃ買える」の江戸弁がおもしろい「キャント・バイ・ミー・ラブ」を。
第3位 上々颱風「Let it be」
沖縄の三線の弦を張ったバンジョーを弾くリーダーの紅龍を中心に結成された音楽集団。
沖縄民謡、レゲエ、江州音頭、ラテン、ルンバなど世界中の音楽を雑多に取り込んだ「ちゃんちきミュージック」は唯一無二。
映画「平成狸合戦ぽんぽこ」の音楽やJALの沖縄キャンペーンソングなどでお茶の間にも知られた。
1991年のアルバム『上々颱風2』において、大ネタ「Let It Be」をちゃんちき感たっぷりに日本語カバー。
第2位 金沢明子「イエロー・サブマリン音頭」
紅白歌合戦にも出場した民謡歌手の金沢明子がこぶしを利かせまくって歌う「イエロー・サブマリン音頭」は、かの大滝詠一プロデュースによるもの。
クレイジーキャッツ的なコミックソングとビートルズを同じレベルで愛する大滝詠一だからこそ作り出せた、世界に誇る日本語ビートルズ。
日本語詞を書いたのは、はっぴいえんど時代からの盟友、松本隆。
第1位 桜田淳子「デイ・トリッパー」
オーディション番組「スター誕生!」からデビューのきっかけをつかみ、森昌子・山口百恵とともに「花の中三トリオ」として一世を風靡した桜田淳子。
10代とは思えない歌唱力、ドリフとの絡みもバッチリなバラエティ対応力、秋田弁という飛び道具もありで70年代に大活躍した。
その実力はライブアルバムではっきりと確認することができる。「マキタスポーツ ラジオはたらくおじさん」に出演させてもらったときにも紹介した「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」での客いじりなんて、17歳とは思えない。
1976年の中野サンプラザ公演を収めた『青春賛歌 桜田淳子リサイタル3ライブ』では、英語詞の「ビートルズ・メドレー」や、日本語詞の「イエスタデイ」「ラブ」など聴きどころが満載。
特にすばらしいのが「デイ・トリッパー」で、バックバンドのキレッキレの演奏もあいまって最高なんですよ。
殿堂入り 松岡計井子「ハード・デイズ・ナイト」
1970年代から渋谷ジァン・ジァンを拠点に、ビートルズおよびジョン・レノンの日本語カバー専門で歌い続けている松岡計井子。
凄みのある歌唱と原曲に忠実なアレンジで、「ドント・パス・ミー・バイ」とか「アイヴ・ガッタ・フィーリング」といったあまり他の歌手が手をつけないマニアックな曲まで幅広く取り上げている。
この人の存在じたいが日本語ビートルズそのものということで、殿堂入りとさせていただいた。
いろいろ紹介したい曲は多いが、1曲となるとこれかな。
- アーティスト: 松岡計井子
- 出版社/メーカー: EMI Records Japan
- 発売日: 2004/04/01
- メディア: MP3 ダウンロード
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まとめ
いかがだったでしょうか。
ビートルズマニアの諸兄姉にあらせられましても、もしかしたら未チェックのものがあったのではないでしょうか。新たな発見になっていれば幸いです。
また、これからちゃんとビートルズを聴こうと思われてるみなさまには、もしかしたら余計な寄り道をさせてしまったかもしれない。
だけど、寄り道がこんなに豊かになってしまってるのもビートルズの奥深いところ。間接的にでもそういうのが伝わっていれば幸いです。
ところで、ビートルズの奥深さといえば、なんと10年以上に渡ってビートルズしかかからないラジオ番組があって今も続いているという。
ラジオ日本をキーステーションに全国にネットされている「THE BEATLES 10」という番組なんだけど、毎週リスナーからのリクエストに基づいてベスト10を発表し続けてるんだよ!50年前に解散したバンドの!ベスト10を毎週!
(この記事がベスト10形式にしてあるのも実は「THE BEATLES 10」に敬意を表してのこと)
そんなヤバい番組のパーソナリティをずっと務めている「謎の音楽家」カンケさんをゲストにお招きして、トークイベントをやります。
テレビ東京「ゴッドタン」の「芸人マジ歌選手権」の数々の名曲の生みの親でもあるカンケさんと一緒に、バラエティ番組初のヒット曲が多数生まれた1997年のJ-POPをがっつり語ります。
あと1997年といえば、「アンソロジー」以降のビートルズ再評価ブームが、ミスチルやそのフォロワーたちを通じてJ-POPシーンに影響を及ぼしまくっていた時期でもある。
そのあたりについてもじっくりお伺いしたい所存。
マジ歌好きな方、ビートルズ好きな方、90年代J-POPが好きな方、ぜひお越しください!