森の掟

J-POPやメタルやフェスや音楽番組なんかの批評(という名の無益な墓掘り行為)

2023年紅白歌合戦の裏テーマと、欠けていた最後のピース

2023年の紅白歌合戦は、ジャニーズの不在によって紅白らしさがクリアに見えた回だった。

 

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紅白歌合戦って、単にその年のヒット曲を並べればいいというわけではなく、今年はこんな年だったよねと国民的ふりかえりをする場になっているじゃないですか。

活躍したスポーツ選手や文化人を審査員に招いたり、流行したワードや商品を企画に取り入れたりもして。

 

今回で言えば、スラムダンクの映画よかったよね〜とか、この人が趣里のお母さん!?とか、これが首振りダンスか〜とか、そういった会話をお茶の間に喚起するような機能が紅白にはある。

 

ただ、国民的ふりかえりの場といっても、個々のトピックをそこまでちゃんと扱える時間があるわけではなく、すべてをちょっとずつなぞるだけにならざるを得ないし、それぞれに独自の世界観を持っていて演出にこだわる歌手たちがだいたい3分ぐらいの尺で次々に現れるので、見てる側の理解が追いつかずにどんどんカオスになっていく。

 

今年の紅白は小中学生と一緒に見てたんだけど、この子たちにはどんなふうに見えてるんだろうって。

さっきまで「すとぷり」とかいう謎のアニメキャラクターが放っていた強烈な違和感を消化できていないうちに画面上には大阪新世界からの中継で天童よしみとかいうド演歌の歌手が暑苦しく大阪愛を歌い上げたりとか、郷ひろみとかいう昭和のスターみたいな人がブレイクダンスに挑戦したなーと思ってたら直後にオオカミの着ぐるみのバンドがアニメの映像をバックに演奏したりとか。

そんなことが4時間にわたって延々と続いていく祭典。

 

今年の「ボーダレス」とかのように一応毎年テーマが掲げられてるんだけど、正直どうでもよくて、必然性も脈絡もなにもあったもんじゃない、この目眩(めまい)こそが紅白の醍醐味なんだと思ってるし、そんな紅白が大好き。

 

 

てゆうか、「ボーダレス」よりももっと明確な裏テーマが全体を貫いていたことに気づいてしまった。

それは、「40代の子育て世代を全力で甘やかす」というもの。

 

たとえば1983年生まれで現在40歳だと、1996年に中学生になり、1999年に高校入学していたわけで、その世代からすると、猿岩石やポケットビスケッツブラックビスケッツヴィジュアル系全盛期が中学生時代と完全に重なるし、高校生時代に椎名林檎MISIAやゆずがデビューしている。

 

猿岩石日記〈Part1〉極限のアジア編―ユーラシア大陸横断ヒッチハイク 歌舞伎町の女王

 

そして20代の頃にロッキン系のフェスに行っていれば10-FEETPerfume星野源を生で見ている確率が高い。

 

まさに今年の紅白は音楽遍歴ど真ん中のラインナップだったということ。

 

(『テレビが届けた名曲たち』って企画、別にポケビ・ブラビである必然性はなくて、別にやまだかつてないWinkでもイモ欽トリオでも金八先生でも北の国からでもよかったわけで、そこに明確な意図を感じるんだよね、HYDE清春に松岡までダメ押しで並べるとことかも)

 

 

さらにいうと、その親世代は70年代後半〜80年あたりが若者時代だったので、キャンディーズ寺尾聰やラッツアンドスターやクイーンがど真ん中ということになる。

 

もっというと、いろんな世代の歌手が幅広く出ているように見えて、実は10年代前半がぽっかり空いているんだけど、これは、今の40代にとってその当時が子育てに忙しすぎて音楽を全然聴けていなかった時期にあたるので思い入れのある曲がないからではないか。

で、子育ても一段落ついて、親子でアニメを見ることが増えてきた20年代から、再びヒゲダンやadoやYOASOBIを知って思い入れができてきた的な。

 

で、さらにここが重要なんだけど、自分のまわりの40代子育て世代の多くが、ここ数年で軒並みK-POPにハマってるという事実。

そういう人たちにとっては、今年の紅白のラインナップって息をつく暇もない完璧な布陣だった。

40代の子育て世代(とその親とその子どもたち)を全力で甘やかすという裏テーマは大成功だったと思います。

 

あとはここにSMAPがいれば完璧だったんだけどなー!!