森の掟

J-POPやメタルやフェスや音楽番組なんかの批評(という名の無益な墓掘り行為)

1998年のこと

1998年、今から20年前。

大学4回生だったにもかかわらず、就職活動を一切やらず、バンドやDJやバイトや麻雀に明け暮れていた。

その前の年、大学の同級生で結成したバンドが関西では知られたコンテストで優勝してしまい、またライブではそこそこ動員できるようになっており、レコード会社から声をかけられたりしたため、すっかり音楽で食っていけると思い込んでしまったのであった。

なんといっても、音楽業界の景気がよかった。自分たちレベルのバンドがどんどんメジャーデビューしていたし、なんならデビュー前の青田買いの段階で月10万ぐらい給料をもらっているなんて話も耳にした。

自分も、まわりのやつらも、当たり前のようにCDを買いまくっていた。あまりお金のない大学生だったけど、輸入盤とか中古とかで何とか安くあげて毎月何枚もアルバムを買っていた。音楽に特に興味がなさそうな同級生でも、カラオケで歌うためにシングルCDを買ってMDに録音してた。WinnyYoutubeもない時代、みんなそうやって音楽を手に入れていた。それが当たり前だった。

 

だいたい、タワーレコードで視聴できるようになったこと自体が画期的だったわけで。

それまではラジオやテレビで聴くか、雑誌や店頭の文字情報なんかをたよりにCDを買っていたわけで。

こうやってあらためて書いてみると、隔世の感どころの騒ぎじゃない。

おれたちの頃の恋愛はな相手の顔も見ず声も聞かずただ和歌のやり取りで口説いてたんだぞ、って平安時代の人が現代人に説明しているような感覚。

 

どんな音楽を聴いてたか

このあたりの時期、90年代なかばから活動していたバンドがどんどんビッグになっていった印象が強い。

イエローモンキーとかジュディマリブランキージェットシティとか、電気グルーヴとか。10代20代のわりと音楽好きな層のものだと思っていたバンドが、CDバブルの追い風に乗ってお茶の間レベルのヒットを放って驚いたもんだった。

ヴィジュアル系もXやGLAYラルクのおかげで市民権を得ていて、地方のほうだと男子がバンドに憧れることイコールそっち系というのが自然な感覚で、楽器屋のいい場所を占めていたのはV系やメタル系御用達のIbanezとかの、なんか変な青い光沢があったり尖ってたりするギターだった。

あと当時はあまり興味もてなかったけどメロコアとか日本語ラップも盛り上がってきていて、自分たちより数年若い世代は断然そっちだった。

洋楽でいうと、UKのブリットポップおよびUSのグランジという90年代を代表するムーブメントが終息した後の時期。UKではケミカル・ブラザーズプロディジーといったあたりが「ビッグビート」なんて呼ばれて人気だったのと、USではミクスチャーロックとかメロディックパンクが人気だった。そのあたりが売れ筋で、よりコアなところで「ポストロック」っていう呼び名が定着していく頃。

UK/USともに全体的に暗くて重い音が多かった印象がある。

 

個人的には、レコード屋で古いのを発掘するほうに興味が移ってた。特にGSとか和モノ周辺。

サニーデイゆら帝やハッピーズやピチカートあたりの影響で、全国的にそういう流れがあったと思う。関西ではキングブラザーズやちぇるしいといったバンドを中心にシーンがあった。

 

フジロック

前の年に開催されたフジロックの第1回目にバンドメンバーや友達と一緒に参加して死にかけたんだけど、98年の第2回目は豊洲の広大な埋立地での開催になったということでまた参戦。

印象に残っているのは、貴重な杉村ルイ時代のスカパラと、客をステージにあげまくって大変なことになったイギー・ポップ。特にThe Stoogesのアルバムは無人島に持ってくリストに常に入ってるほどなので、動くイギーが見れただけでも感動だったのに期待以上にワクワクさせてくれた。あと、幼い娘さんを肩に抱え上げた上半身裸の中村達也が客席のエリアをゆうゆうと横切っていく姿。なんだか神々しくてまわりのみんなが見とれていた。 


iggy pop- I wanna be your dog - Passenger-

 

伝説のミサワランド

かつて大阪の南茨木というところの幹線道路沿いにミサワランドという複合アミューズメント施設があったことを覚えている北摂人はいるだろうか。

ボーリング場、ゲーセン、書店、CDショップ、レストランが一体になっていて(昔はカラオケボックスもあったみたいだけど98年にはすでに倉庫として使われていた)、毎日朝5時まで営業していた。

実は98年頃からそこで深夜バイトしていたのだった。

 

ミサワランドは名物ワンマン社長のいろんな思いつきがぶちこまれ、秘宝館スレスレの存在感を放っていた。

深夜に車で来るような、今だったらドンキと親和性があるような客層にあわせて、ユーロビートとかチャラ箱でかかるようなダンスポップがよく売れていたんだけど、粗利率を高めるため、そして他の店にない品揃えを追求するあまり、海外のレーベルと直で 取り引きし始め、結果ハードコア・テクノとかガバが日本屈指の充実度になっていたりもした。

また、やんちゃな若者のなかでもアンテナが高いほうの層にあわせて、アナログレコードの取り扱いにはじまりDJのミックステープなんかも売ってたりして、ストリートへの目配せも効いていた感じ。 

 

いやもうミサワランドのことは話し始めると長くなるのでこのへんにするけど、とにかく98年のCDバブル期を、そういう場所でCDを売る側として体験してたのでした。

 

売る側からみたCDバブル

あの頃はほんとに、日雇いっぽい仕事帰りのにーちゃんでも3,000円のアルバムを2〜3枚レジに持ってくるのが普通だった。「スーパーユーロビート」シリーズは毎月のように発売され、VOL.100とかになってたけど、出るたびにみんなちゃんと買ってく。FM802でかかったのをチラッと聴いていいなと思ったらうろ覚えのまま店員の前で歌ってみせて「あのララララーっていうやつある?」ってな感じでさくっとお買上げ。

当時はそれが普通だと思っていたけど、2018年の感覚からするとやっぱりすごいなー。

 

告知

こんな感じの話とか批評とかを織り交ぜて1998年のことを語るイベントをやります!

われわれLL教室、久々のトークイベントです。

 

 

LL教室の試験に出ない1990年代シリーズ「1998年」編

2018年2月11日(日)

18時半開場/19時開演

1500円+1ドリンク

場所は、荻窪ベルベットサン

 

LL教室の他のメンバー(森野誠一さん、矢野利裕くん)にとってもそれぞれの98年があるし、さらに1998年といえばメジャーだけじゃなくてインディーズも同じように盛り上がっていたわけで、そのあたりのことをお伺いすべく、ゲストにはなんとあの元ビークルの日高央(ヒダカトオル)さんをお迎えします!

 

あまり大人数は入れないハコですので、予約はお早めに! 

当日はみんなの1998年も聞きたいですね。

 

矢沢永吉やドリカムや松田聖子にできなかったことをX JAPANとBABYMETALができた理由(世界一やさしいヘヴィメタルという音楽)

X JAPANやBABYMETALが海外でめっちゃ売れている。

www.oricon.co.jp

www.barks.jp

 

一昔前まで、日本で頂点を極めた大物歌手が次の目標として世界進出に挑戦するっていう流れがあって、ほぼ全員が無残な結果に終わるっていうパターンがあったことを思うと、隔世の感がある。

 

たとえば矢沢永吉

名著『成りあがり』を出版するなど日本では飛ぶ鳥を落とす勢いだった頃に単身渡米。ドゥービー・ブラザーズらをバックに従えてアルバムをリリースしたものの、目立った売り上げにはならなかった。

たとえば松田聖子

「seiko」を名乗り、当時世界的に人気があったニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックとデュエットするなど様々な戦略を練ったにもかかわらず、こちらも目立った売り上げにはならなかった。

たとえばドリカム。

わざわざレコード会社を移籍するなど万全の体制を整えて海外進出したものの、解散の危機だったと後に語られるレベルの大失敗。

 

これらの事例をみて、当時の大人たちは訳知り顔でいろんなことを言っていた。

いわく、「日本のロックはレベルが低いから本場では通用しない」「英語の発音が下手だからネイティブが聴いたら笑っちゃう」「逆にアメリカ人が歌舞伎をやったら見たいと思う?それと同じこと」などなど。

 

 

そんな時代を知っている世代からすると、X JAPANとBABYMETALが成し遂げたことって、ほんと奇跡みたいに感じる。

でもそれと同時に、なぜ矢沢永吉やドリカムや松田聖子にできなかった海外でのリリース的な成功をX JAPANとBABYMETALができたのか、その理由についていくつか思い当たることもある。

 

まあ、いくつかの理由が複合的に作用したのは間違いないと思うし、すでにいろんな人が言及しているので、この場ではできるだけまだ誰も指摘していない点について無責任に述べてみたい。

 

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荻野目洋子「ダンシング・ヒーロー」のリバイバルはどう考えても必然


輝く!日本レコード大賞 ダンシングヒーロー

 

ダンシング・ヒーロー」は日本語カバーですよ

登美丘高校ダンス部の「バブリーダンス」で今年リバイバルヒットした荻野目洋子の「ダンシング・ヒーロー」。

この曲は1985年にリリースされたANGIE GOLDって人の「Eat You Up」に日本語で歌詞をつけて歌った、いわゆる日本語カバー。


ANGIE GOLD - EAT YOU UP ( V.J ANDRES FABIAN C.R AUDIO HQ )

 

80年代後半は、「ダンシング・ヒーロー」以外にも洋楽のヒット曲(特にユーロビート)の日本語カバーがいくつもお茶の間に登場した時代だった。

代表的なのはこんな感じだけど、日本語カバーだと意識せずに聴いていた人が多かったように思う。

小林麻美「雨音はショパンの調べ」1984

石井明美CHA-CHA-CHA」1986年

長山洋子「ヴィーナス」1986年

BaBe「ギヴ・ミー・アップ」1987年

森川由加里「SHOW ME」1987年

Wink「愛が止まらない」1988年

 

他にも売れなかったけど同じ発想で売り出された日本語カバー曲が大量に存在していて、そういったあたりの発掘をライフワークにしている自分のような人間にとって、80年代後半は50〜60年代前半と並ぶ黄金時代になっている。

 

日本語カバーについての大胆な(大ざっぱな)仮説

ではなぜここが黄金時代だったのか、戦後の歌謡曲〜J-POP史のなかで、日本語カバーが多い時期と少ない時期がはっきり分かれる傾向があるのはなぜか。

ほとんどの人にとっては完全にどうでもいいことだと思うけど、その理由を自分なりにまじめに考えてみてひとつの仮説を立てるに至ったので、今日はその話をさせてください。

 

その仮説というのが、「アーティスト主義」の時代は日本語カバー曲が少ない説

 

この先、大ざっぱな話しかしませんが、もしよかったら戦後〜2017年までの歌謡曲〜J-POP史を「アーティスト主義」というキーワードでちょっとふりかえってみて、一緒に仮説を検討してみてほしい。

 

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大量のレコードとCDに囲まれて暮らしてた生活がApple Musicを2年半使って一変した話

2015年に使い始めて2年半。
すっかりApple Musicなしでは生きられない身体になってしまったというお話。

 

 

Apple Musicとは

Apple Musicについて一応おさらいしておくと、Appleが提供している音楽の定額聴き放題サービス。iPhoneに最初から入ってる「Music」ってアプリで聴ける。
月額980円で数千万曲の音楽がストリーミングで聴き放題になり、iPhoneでダウンロードすることも可能。最近ではオリジナルの動画コンテンツもいろいろ始まってる。
3ヶ月間は無料でお試し可能。

 

okmusic.jp

 

コストパフォーマンス

はっきり言って、月980円は決して高くない。
毎月こんな安くていいのかなって申し訳ない気持ちで決済させていただいてる。
年契約で支払うとさらに割引されるらしいんだけど、恐縮すぎてやってない。

 

登録後に、年間プランに切り替えることができます。年間プランなら、Apple Music を 10 か月分の料金で 12 か月利用できます。

iPhone、iPad、iPod touch、Mac、Windows パソコンで Apple Music に登録する - Apple サポート

 

Apple Musicがサービス開始するまでは、CDやダウンロードにだいたい月平均5,000円ぐらいは使っていたので、5分の1の値段で無限かもと思える量の楽曲が聴けてしまう現状は、本当にいい意味でけしからん。 

 

洋楽・邦楽の充実度

洋楽に関しては、アレあるかな?って検索したものはほぼ100%ある。

たとえばN.E.R.D.の新しいアルバムもあるし、S.O.D.もN.W.A.もXTCTLCCCRBCRもEMFもKLFもある。

メタリカメガデスも、ジャンゴ・ラインハルトマイルス・デイヴィスもある。

 

邦楽もサービス開始当初は貧弱だったけど、2017年末の時点ではかなり充実してきた。

検索してヒットする確率は7割ぐらい。ちなみにApple Musicで見つからなかった残り3割は、廃盤だったりでTSUTAYAにもないしあんまりタワレコにもないあたりなので、仕方ないし、いま流行ってるものに限ればほとんど不自由ない。
(逆に、CDではとっくに廃盤だけどApple Musicにはあるって楽曲は大量に存在する)

 

最新のオリコンチャートと比較してみると、ジャニーズ以外はだいたい揃ってることがわかる。AKB系もEXILE一派も韓流のグループも聴き放題。

 

機能面の良い点と悪い点

Apple Musicが始まったとき、ある日突然iTunesが勝手に拡張した、みたいな印象をもった。

それまでせっせとCDをリッピングして作り上げた自慢のライブラリ(1万曲とか)のとなりに、いきなり数千万曲がパカっと開放された感じ。

「えっ」と思ったし、なんか癪に障るみたいな気持ちもあったんだけど、そんな気持ちは一瞬だけ。あまりの便利さにすぐ取り込まれた。

そんな感じなので、もともとiPhoneで音楽を聴いてた人には基本的な操作面で不自由は感じないはず。

 

そんなApple Music、機能面で強化されてくのは、やはり数千万曲の中からいかに好きな感じの曲に出会うかって部分になってくる。

自分がよく使っているのが「For You」のプレイリストと、「Radio」機能。

 

Apple Musicに登録したとき、好きなジャンルやアーティストをいくつか選ばされるんだけど、それに基いていろいろオススメしてくれるのが「For You」。登録後もよく聴くやつとかお気に入り(ハートマーク)にしたやつをもとにこっちの好みを学習してくれる。
今の自分の「For You」こんな感じ。

 

「For You」では、オススメのアルバムとプレイリストがいくつか出てくるんだけど、この「プレイリスト」ってのは、いろんなテーマごとに20曲ぐらいが集められたリスト。
これが昔に比べて種類や深みがどんどん向上してる気がする。
たとえば「◯◯に影響を与えたアーティスト」とか、あとプロデューサー軸とかレーベル軸とか、おもしろい切り口のリストがいろいろオススメされてくる。

 

CDだとレコード会社の縛りがあって1枚にまとめるのは不可能なジャンルやカテゴリが、サクッとまとまっていてくれて本当に便利。
(◯◯系っていうのがひとつのレコード会社に収まってる事例なんてモータウンとかエイベックスとかアイランドレコードとかごく一部でしょ)
CDでは実現しづらいこういった企画ができるのも、定額制サービスならでは。

 

最近は有名人や音楽メディアが選曲したプレイリストなんかもあったりして。
これ日本人アーティストのやつも増やしてくれたらおもしろいと思う。

 

ジャンルの中でももう少し時代や文脈を限定したいときは、「Radio」機能が役立つことが多い。
ある曲を再生してるときに、その曲と近い曲を流していってくれる機能。
おそらく過去にその曲を再生したユーザーが他にどんな曲を聴いてるかみたいなビッグデータを活用してるものと思われる。
思ってたのと違う方向に転がってく場合もあるけど、それはそれでアリかなと思えることもある。知らなかった曲に出会えるし。

 

音楽の聴き方そのものが変わった

いろんな活用法があるけど、自分が好きなアーティストと近い感じの曲を見つけるのは簡単だし、フェスの予習なんかもう大活躍してくれる。

個人的には、中高生のときにお金がなくて(レンタル屋に並ぶほどメジャーでもなくて)手に入れられず、結局そのままになってるやつ。そして今この年になってわざわざ買おうとは思わないやつ。
そういうやつを思う存分聴けるのがすごくいい。

90年代に横目でチラ見してたアルバムに20年越しで出会えるおもしろさ、あれはちょっと沼だった。一生その周辺に浸ることもできそうでちょっとこわかった。ノスタル爺になる自分が容易に想像できた。

具体的にいうと90年代初頭のスラッシュメタル勢とか。80年代末のUKインディーダンス周辺とか。
特定のアーティストが好きっていうわけではなくそのジャンルを聴き込みたいってニーズ、かつてはちょうどいい叶え方がなかったんだけど、それもApple Musicならいい塩梅にまとめてくれてる。具体的にいうとサルサとかレゲエとかAORとかフュージョンとか。

 

アーティストへの還元について

しかし、Apple Musicがユーザーにとってこんなにコスパがいいってことは、アーティスト側に皺寄せがいってしまってるのではないか?

 

ある程度音楽に思いのある人ならここが気になってしまうはず。

980円で無限に聴けるような形態だと、アーティストに入るお金が少ないのではないかと。
あくまで合法的な手段で、アーティストも同意の上で曲を提供した上で聴き放題やってるはずなのに、どこかしら後ろめたい気持ちになってる人も多いと思う。自分もそうでした。

 

そこでちょっと調べてみたら、どうやら1再生あたり0.16円が収入になっているらしい。

swinginthinkin.com


これはこれで悪くないのかもしれない。

たとえば毎日必ず聴く大好きな曲だあったとして、0.16×365=58.4円/年がアーティストに入るらしい。

…ちょっと少ないような気がする。

 

でも同じような人間が何千人いれば話は変わってくるか。

うーん、よくわかりません。

ただひとつ言えるのは、Youtubeよりは明らかにアーティストに実入りがあるってこと。新譜のチェックやカラオケの練習なんかをYoutubeで済ませちゃってる人は、Apple Musicで聴くことでアーティストに還元してあげてほしい。

 

ちなみに、ユーザーとアーティストの関係はそうなるとして、レコード会社も原盤権に応じて収入を得るとして、もっとも割を食うのは誰かというと、CD屋さんですね。

Apple Musicの世界ではアーティストとリスナーの間にはApple社しか存在しないので、CD屋さんとかCDのプレス工場などは商売あがったり。


その中でも特に、「所持しなくてもいいからデータ化して手元に置きたい」っていうニーズでは、TSUTAYAと完全に競合するわけで、案の定レンタルCD店はここ最近減り続けてる。

CDレンタル店舗数は2,370店に減少。大型店舗の割合が64%に増加 - AV Watch

 

ところでこのお金の流れ、何かに似てると思ったら、カラオケだ。

円広志は「とんでとんで」の「夢想花」などでいまだに年間1千万のカラオケ印税があるらしいっていう話、関西人なら一度は聞いたことがあると思う。

そんなノリで、CDとしては売りつくした過去の曲がApple Musicのおかげで突如誰かを潤わせている可能性もあるんじゃないかと。

そんな夢のある話もApple Musicには転がっているかもしれない。知らんけど。

 

結論(こんな人にオススメ)

以上、いろいろあるけど、こんな人にはApple Music絶対オススメです。

  • 過去に音楽を聴き込んでいた時代がある
  • 自分の好みの音がある程度あるし、広げてみたいとも思っている
  • 話題の新人やヒットチャートも少しはチェックしたい
  • 月に1,000円以上CDに使っている

こういう人であれば、月980円以上の価値を必ず得られるし、こんなに良いサービスが980円だなんてなんか恐縮だな申し訳ないなっていう今の自分の気持ちにも共感してもらえるはず。

 

自分はApple Musicに入っている曲でも、本当に好きなものはわざわざCDやレコードでも買ってるし、そうほうが精神衛生上よろしい。

 

 以上、無料期間もあるわけだし、Apple Musicに加入しない理由が本当にないなと。

 

 

とはいえ、今自分が中高生だったとして、Apple Musicがあったらどうかと思うと実は微妙だったりする。

当時は2~3,000円のCD1枚を買うのに毎回清水の舞台から飛び降りてたし、ハズレもさんざん引いたけど、そのぶん1枚のアルバムに対する思い入れはめっちゃ強かった。

そういう音楽体験を若いときにやってきて、今Apple Musicに出会ってるからこそ、良い距離感で付き合えてる感じがする。

 

そうではなく、最初からApple Musicだけで聴いていると、音楽への思い入れや距離感というものはどうなっていくんだろう。

大枚はたいて買ったのになんかピンとこないアルバムを、意地でも気に入ってやるってな感じでずっと聴いて、そのうちなんかよく感じられてくる瞬間ってのがあの頃はあった。なんなら、子供にはわからない良さとかスルメ感はそうやって意地で聴いているうちにわかってくるものかもしれないし。

数秒ぐらいで検索して見つけた音を数十秒聴いてみてちょっと違うなと思って捨てる、ってのが今の基本になるから、スルメ感ってのはもう生まれないのではないか。

 

だから若者にはApple Musicオススメしたくないって気持ちもある。

30代以上である程度確立された音楽観をもってる上で 楽しんでもらいたい。
そういうサービスだと思いました。

 

 
 
 
 
 
 

神社=コンビニ説

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日本の神社はいくつかの系統に分かれている。
八幡神社、稲荷神社、熊野神社天満宮氷川神社春日神社…

 

それぞれ本社にあたる神社があって、そこから招かれた神様をまつって各地に小規模な神社ができている。
稲荷神社だと京都の伏見稲荷大社だし、春日神社だと奈良の春日大社だし。

そのへんにある神社のほとんどはそういう感じだと思う。

たまにそういった系列に属さない神社もある。

 

では、現在、どこかしらの系列になっている日本各地の神社は、最初からそうだったのか。

気になりますよね。

 

この疑問をもったきっかけは、杉並区にある大宮八幡宮で境内の案内を見たこと。
大宮八幡宮は川沿いのちょっとした丘の上にあって、なかなか雰囲気のあるたたずまいをしているんだけど、説明によると、神社の境内を発掘したら弥生時代の遺跡がでてきたらしい。

境内の北端につづく旧境内地から弥生時代の祭祀遺跡や族長の住居跡が発掘され、この地は太古からの聖域であったことが判明致しております。

大宮八幡宮の歴史・由緒 | 大宮八幡宮

 

おそらく弥生時代には、八幡神社は存在しないわけで。
でもその頃からこの場所は、何かの儀式をする場所だったらしい。

 

そこで、これって何かに似てるな!と思った。

 

 

そう、コンビニ。

 

 

つまり、その地で古くからやってる酒屋さんやタバコ屋さんが、ある時期からセブンイレブンやファミマになるっていうのと同じだなと。

それまでは酒を中心に、つまみとか弁当、雑誌ぐらいは売っていたかもしれないけど、ファミマになると全国共通の品揃えやサービスレベルになるという。

 

たぶん、大宮八幡宮も、その土地に根ざした神様がまつられていて、まつり方はその土地オリジナルだったはず。
鳥居とか、賽銭箱とか、そんなものもなかっただろうし、初詣なんて概念もなかった。その土地のタイミングで、収穫を祝ったり、天候を祈ったりしてたはず。
それがどこかのタイミングで、大手の参加に入って、いろんなことがフランチャイズ化されたんだろう。

(一方で、もともと何もなかったところにいきなりコンビニができるように、ただの道端とかただの森にいきなり八幡様やお稲荷さんを招いて神社にするパターンも当然めっちゃ多いはず)

 

そう考えると、神社ってコンビニそのものだなって。

 

コンビニは便利。
弁当も電池もコーヒーも買える。チケットの発券もできる。
神社も便利。
日本中どの神社でもおみくじを引けたり地鎮祭をお願いできたりする。

 

その便利さは便利さとしてを甘受しつつ、一方で便利じゃなかった頃の神社に思いを馳せたり、その頃の名残りを見つけてワクワクしたりしたい。

たまにある異様にお酒のラインナップが充実してるファミマとか、いまだに地元の人から屋号で呼ばれてるセブンイレブンを見つけてワクワクするように。

 

さらに思いを馳せてしまうのが、コンビニチェーンが全国の酒屋やタバコ屋を塗り替えていった80~90年代みたいな時期が、神社の世界にもあったんだろうなということ。

たとえば「鈴木さん」って姓のルーツは、熊野神社の神官だといわれている。

和歌山本社から全国に熊野神社フランチャイズを広げる営業マンみたいなもんだったのではないか。だから日本全国に鈴木さんが広く存在しているのではないか。

また鈴木姓が全国に広まった理由も、熊野神社と深い関係がある。それを裏付けるように、「熊野神社」が多く勧進されている東日本に「鈴木」姓が多い。鈴木を名乗る神官たちは全国に渡り、熊野信仰とともに各地に根付いた。

[特集] 発祥の地、和歌山

 

神社フランチャイズ拡大期はいつ頃だったか、そして広める側と受け入れる側それぞれにどんな思惑があったのか、鈴木一族の営業ノウハウはどんなもんだったのか、いろいろ考えるのが楽しい。

 

氷川神社チェーンが関東だけで勢力を誇っているように、北海道では有名なコンビニチェーン「セイコーマート」が存在するとか、そういう地域差があるところもコンビニと神社は似ている)

 

恵方巻きと日本書紀

ここ数年、節分ごとに出てくるこの話題。

headlines.yahoo.co.jp

恵方巻っていつの間に広まったのか」「マーケティングによって作られた偽物じゃないのか」みたいな声をよく耳にするんだけど、個人的な体験でいうと、亡くなったおばあ様(大正生まれ)が「丸かぶりや」って言って昔から節分の日にやっていた。

大阪の色街が発祥とか言われても、あのおばあさんにそんな色っぽい文化との接点はなかったはずなので、ちょっと違和感がある。

 

ともあれ、比較的近い過去に日本のある一部の地域で生まれた風習ということは間違いないと思う。それからここ数年で全国に広まっていったと。

それまで恵方巻の風習がない地域の人からしたら、いつの間にか当たり前のような顔をしてスーパーやコンビニに太巻が並んでいるのを見るとやはり変な感じがするだろう。その気持ちはすごくよくわかる。

 

 

最近読んだ本の中でおもしろかったのがこれ。

神話で読みとく古代日本 ──古事記・日本書紀・風土記 (ちくま新書)

神話で読みとく古代日本 ──古事記・日本書紀・風土記 (ちくま新書)

 

みんなが何となく知っているいわゆる<日本の神話>というやつが、誰がどのような意図で作っていったのか、古事記日本書紀を読み解いて推理していくという試み。

古事記日本書紀には、通して読んでいくと明らかに前後が矛盾しているところや登場人物のキャラがいつの間にか変わってるところが散見されるらしく、それはいくつかの神話を都合よくつなぎ合わせていった名残りなのではないかという説が展開されている。

 

古事記日本書紀が書かれたのは奈良時代

そのときからいわゆる<神話の世界観>が日本全国に伝わっていって、今となっては日本中どこに行っても神社があって、アマテラスだとかオオクニヌシとかの神様がまつられている。青森の人も鹿児島の人も新潟の人も、我が国の神話といえば天の岩戸の話とか因幡の白兎の話を思い浮かべると思う。

当たり前すぎることを当たり前に言っているだけのように見えるだろうけど、古事記日本書紀が書かれる以前の日本では、地方ごとにぜんぜん違う神話や風習があったはずだ。奈良時代より前に、「この世界はどうやって誕生したんですか?」と奈良の人と鹿児島の人と青森の人に聞いたらまったく違う答えがかえってきたはず。

 

何がいいたいかというと、これから年月がたてば恵方巻もアマテラスみたいになるだろうなということ。

いま恵方巻に文句を言ってる人たちが寿命で死ぬ頃には、恵方巻はもう立派な日本人の風習になっているだろう。

奈良周辺の部族が信仰していたローカルな太陽の女神が、日本書紀に取り上げられたことで、いつしか日本全国の神様のトップの地位を得たように。

 

 

 

BABYMETAL『METAL RESISTANCE』(メタル・レジスタンス)収録曲の元ネタ一覧

METAL RESISTANCE -来日記念限定盤-

2016年4月にリリースされたBABYMETALの2ndアルバム『METAL RESISTANCE』(メタル・レジスタンス)は、文句なしの名盤です。

デビューしたばかりの頃はまだ今のような音楽性が固まりきっていなかったため、1stアルバムはアイドル色やEDM色が多少入っていてとっちらかった印象だったけど、それに比べてこの2ndは、世界観がかっちり決まった上で作られてて、アルバムとしての統一感がすばらしい。

だけどその一方、個々の収録曲には、いろんな元ネタが散りばめられていて、メタルやラウドミュージック全般におけるちょっとした百科事典みたいなアルバムなのです。

90年代にひととおりメタル周辺を聴いてきた人間としては、散りばめられた元ネタを拾っていく作業がとにかく楽しくて楽しくて。あの当時から20年越しにご褒美をいただいたようなアルバムになってる。

せっかくなので、これからみんなにおすそわけしていこうと思う。

 

「KARATE」

90年代、それまでのスラッシュメタルの流れの中から、グルーヴがあって重さをウリにした一派が出てきた。日本では「モダンヘヴィネス」なんていう名前で呼んでいたり。

代表的なバンドはPANTERA(パンテラ)。PANTERAは長髪革ジャン革パンの伝統的メタルスタイルがダサくなってきた時代の空気を敏感に察知し、スケーターファッションで登場した。ザクザク感のあるギターと、ペタペタ聞こえる特徴的なバスドラが当時は斬新だった。

最近だとMASTODONとかLamb of Godあたりがその流れをくんでいると思う。

「KARATE」の重さはまさにそのあたりが元ネタ。


Pantera - I'm Broken (Official Video)

 

「あわだまフィーバー」

この曲を作ったのは元THE MAD CAPSULE MARKETSマッド・カプセル・マーケッツ)の上田剛士

BiSなどへの楽曲提供でもおなじみの、ディストーションギターとデジタルのビートという組み合わせは、すっかりこの人のトレードマークになっている。

ただ、「あわだまフィーバー」のようなドラムンベースのビートとディストーションギターの組み合わせということになると、Atari Teenage Riotアタリ・ティーンエイジ・ライオット)の影響も濃厚に感じられる。

Atari Teenage Riotは自らの音楽性を「デジタルハードコア」と名づけており、ガチ左翼(というかアナーキスト?)でラディカルな発言とともに当時は世界的に注目されたものだった。97年の伝説のフジロックにも出演している。


Atari Teenage Riot - Digital Hardcore

 

「META!メタ太郎」

この曲はおそらくMANOWAR(マノウォー)あたりの汗臭い世界感が下敷きになってるっぽい。ドイツ~北欧方面の、メタルの中でももっともむさ苦しくてモテない界隈。

偽物メタルに死を!とか言って吹き上がってる人たち。

まあ良く言えば「勇壮」ってことか。それを10代の日本の女性が歌っているというギャップにクラクラする。

 

シンコペーション

この曲はメタルじゃなくて日本のヴィジュアル系LUNA SEAルナシー)の「ROSIER」がが元ネタになっている。
曲の始まり方もそうだし、サビの歌詞「揺れて揺れて」も完全に一致。さらにはサビのシンコペーションしまくるところも完全に「ROSIER」へのオマージュになっている。
シンコペーションとは…この場合わかりやすくいうと、リズムのアクセントを小節の頭ではなく前の小節の終わりにズラすやりかたのこと。


LUNA SEA - ROSIER

 

「Sis.Anger」

この曲のタイトルはMETALLICAメタリカ)のアルバム「St.Anger」からもってきてるわけだが、曲自体はCARCASS(カーカス)の3rdアルバム頃の音楽性が元ネタになってる。
セリフのサンプリングではじまるところとか、邪悪な音階のリフを高速ブラストビートでたたみかけるところとか、かなりそのまんま。
CARCASS(カーカス)は、デスメタルグラインドコアという言葉が生まれる前から活動している大御所。途中でメロディアスな方向に路線を変えてきたが、初期はひたすらこういう感じ。どの時代も最高なので、ぜひ聴いてください。


Carcass - Symposium of sickness

 

「No Rain, No Rainbow」

これはもう完全にXの「ENDLESS RAIN」でしかない。タイトルからサウンドの作りから何もかもがオマージュに満ち満ちているんだけど、ギターソロの終わり方。ドラムに至ってはリズムパターンが完コピといってもいいレベル。


X JAPAN - Endless Rain

 

「Tales of The Destinies」

複雑な展開がたまらないこの曲は、まんまDREAM THEATER(ドリーム・シアター)。特にこの曲。

一曲の中でどんどん展開が変わったり変拍子を多用したりで、テクニック志向のキッズを熱狂させたDREAM THEATERプログレ・メタルなんて言われてた。


Dream Theater - Take the Time



 

こうやって見ていくと、BABYMETALの作り手たちは完全に同世代(1976年前後生まれ)ってことがわかる。というのも、メタルの黄金時代って言われているのは実は80年代だったりするので、あえて90年代に絞って元ネタにしてるのはそこがど真ん中だからなんじゃないかと。そして90年代のメタルがいかに多様でおもしろいことになっていたか、ってことも非常によくわかる。

 

逆に言うと、ここで取り上げなかった「Road Of Ressistance」や「Amore -蒼星-」あたりの、メロディック・スピード・メタルとJ-POPの融合とでもいうべき路線は、元ネタありきっていう感じじゃない。つまりここらへんが今後のBABYMETALの本流の路線になっていくんだろうなという気がする。