2015年に使い始めて2年半。
すっかりApple Musicなしでは生きられない身体になってしまったというお話。
Apple Musicとは
Apple Musicについて一応おさらいしておくと、Appleが提供している音楽の定額聴き放題サービス。iPhoneに最初から入ってる「Music」ってアプリで聴ける。
月額980円で数千万曲の音楽がストリーミングで聴き放題になり、iPhoneでダウンロードすることも可能。最近ではオリジナルの動画コンテンツもいろいろ始まってる。
3ヶ月間は無料でお試し可能。
コストパフォーマンス
はっきり言って、月980円は決して高くない。
毎月こんな安くていいのかなって申し訳ない気持ちで決済させていただいてる。
年契約で支払うとさらに割引されるらしいんだけど、恐縮すぎてやってない。
登録後に、年間プランに切り替えることができます。年間プランなら、Apple Music を 10 か月分の料金で 12 か月利用できます。
iPhone、iPad、iPod touch、Mac、Windows パソコンで Apple Music に登録する - Apple サポート
Apple Musicがサービス開始するまでは、CDやダウンロードにだいたい月平均5,000円ぐらいは使っていたので、5分の1の値段で無限かもと思える量の楽曲が聴けてしまう現状は、本当にいい意味でけしからん。
洋楽・邦楽の充実度
洋楽に関しては、アレあるかな?って検索したものはほぼ100%ある。
たとえばN.E.R.D.の新しいアルバムもあるし、S.O.D.もN.W.A.もXTCもTLCもCCRもBCRもEMFもKLFもある。
メタリカもメガデスも、ジャンゴ・ラインハルトもマイルス・デイヴィスもある。
邦楽もサービス開始当初は貧弱だったけど、2017年末の時点ではかなり充実してきた。
検索してヒットする確率は7割ぐらい。ちなみにApple Musicで見つからなかった残り3割は、廃盤だったりでTSUTAYAにもないしあんまりタワレコにもないあたりなので、仕方ないし、いま流行ってるものに限ればほとんど不自由ない。
(逆に、CDではとっくに廃盤だけどApple Musicにはあるって楽曲は大量に存在する)
最新のオリコンチャートと比較してみると、ジャニーズ以外はだいたい揃ってることがわかる。AKB系もEXILE一派も韓流のグループも聴き放題。
機能面の良い点と悪い点
Apple Musicが始まったとき、ある日突然iTunesが勝手に拡張した、みたいな印象をもった。
それまでせっせとCDをリッピングして作り上げた自慢のライブラリ(1万曲とか)のとなりに、いきなり数千万曲がパカっと開放された感じ。
「えっ」と思ったし、なんか癪に障るみたいな気持ちもあったんだけど、そんな気持ちは一瞬だけ。あまりの便利さにすぐ取り込まれた。
そんな感じなので、もともとiPhoneで音楽を聴いてた人には基本的な操作面で不自由は感じないはず。
そんなApple Music、機能面で強化されてくのは、やはり数千万曲の中からいかに好きな感じの曲に出会うかって部分になってくる。
自分がよく使っているのが「For You」のプレイリストと、「Radio」機能。
Apple Musicに登録したとき、好きなジャンルやアーティストをいくつか選ばされるんだけど、それに基いていろいろオススメしてくれるのが「For You」。登録後もよく聴くやつとかお気に入り(ハートマーク)にしたやつをもとにこっちの好みを学習してくれる。
今の自分の「For You」こんな感じ。
「For You」では、オススメのアルバムとプレイリストがいくつか出てくるんだけど、この「プレイリスト」ってのは、いろんなテーマごとに20曲ぐらいが集められたリスト。
これが昔に比べて種類や深みがどんどん向上してる気がする。
たとえば「◯◯に影響を与えたアーティスト」とか、あとプロデューサー軸とかレーベル軸とか、おもしろい切り口のリストがいろいろオススメされてくる。
CDだとレコード会社の縛りがあって1枚にまとめるのは不可能なジャンルやカテゴリが、サクッとまとまっていてくれて本当に便利。
(◯◯系っていうのがひとつのレコード会社に収まってる事例なんてモータウンとかエイベックスとかアイランドレコードとかごく一部でしょ)
CDでは実現しづらいこういった企画ができるのも、定額制サービスならでは。
最近は有名人や音楽メディアが選曲したプレイリストなんかもあったりして。
これ日本人アーティストのやつも増やしてくれたらおもしろいと思う。
ジャンルの中でももう少し時代や文脈を限定したいときは、「Radio」機能が役立つことが多い。
ある曲を再生してるときに、その曲と近い曲を流していってくれる機能。
おそらく過去にその曲を再生したユーザーが他にどんな曲を聴いてるかみたいなビッグデータを活用してるものと思われる。
思ってたのと違う方向に転がってく場合もあるけど、それはそれでアリかなと思えることもある。知らなかった曲に出会えるし。
音楽の聴き方そのものが変わった
いろんな活用法があるけど、自分が好きなアーティストと近い感じの曲を見つけるのは簡単だし、フェスの予習なんかもう大活躍してくれる。
個人的には、中高生のときにお金がなくて(レンタル屋に並ぶほどメジャーでもなくて)手に入れられず、結局そのままになってるやつ。そして今この年になってわざわざ買おうとは思わないやつ。
そういうやつを思う存分聴けるのがすごくいい。
90年代に横目でチラ見してたアルバムに20年越しで出会えるおもしろさ、あれはちょっと沼だった。一生その周辺に浸ることもできそうでちょっとこわかった。ノスタル爺になる自分が容易に想像できた。
具体的にいうと90年代初頭のスラッシュメタル勢とか。80年代末のUKインディーダンス周辺とか。
特定のアーティストが好きっていうわけではなくそのジャンルを聴き込みたいってニーズ、かつてはちょうどいい叶え方がなかったんだけど、それもApple Musicならいい塩梅にまとめてくれてる。具体的にいうとサルサとかレゲエとかAORとかフュージョンとか。
アーティストへの還元について
しかし、Apple Musicがユーザーにとってこんなにコスパがいいってことは、アーティスト側に皺寄せがいってしまってるのではないか?
ある程度音楽に思いのある人ならここが気になってしまうはず。
980円で無限に聴けるような形態だと、アーティストに入るお金が少ないのではないかと。
あくまで合法的な手段で、アーティストも同意の上で曲を提供した上で聴き放題やってるはずなのに、どこかしら後ろめたい気持ちになってる人も多いと思う。自分もそうでした。
そこでちょっと調べてみたら、どうやら1再生あたり0.16円が収入になっているらしい。
これはこれで悪くないのかもしれない。
たとえば毎日必ず聴く大好きな曲だあったとして、0.16×365=58.4円/年がアーティストに入るらしい。
…ちょっと少ないような気がする。
でも同じような人間が何千人いれば話は変わってくるか。
うーん、よくわかりません。
ただひとつ言えるのは、Youtubeよりは明らかにアーティストに実入りがあるってこと。新譜のチェックやカラオケの練習なんかをYoutubeで済ませちゃってる人は、Apple Musicで聴くことでアーティストに還元してあげてほしい。
ちなみに、ユーザーとアーティストの関係はそうなるとして、レコード会社も原盤権に応じて収入を得るとして、もっとも割を食うのは誰かというと、CD屋さんですね。
Apple Musicの世界ではアーティストとリスナーの間にはApple社しか存在しないので、CD屋さんとかCDのプレス工場などは商売あがったり。
その中でも特に、「所持しなくてもいいからデータ化して手元に置きたい」っていうニーズでは、TSUTAYAと完全に競合するわけで、案の定レンタルCD店はここ最近減り続けてる。
CDレンタル店舗数は2,370店に減少。大型店舗の割合が64%に増加 - AV Watch
ところでこのお金の流れ、何かに似てると思ったら、カラオケだ。
円広志は「とんでとんで」の「夢想花」などでいまだに年間1千万のカラオケ印税があるらしいっていう話、関西人なら一度は聞いたことがあると思う。
そんなノリで、CDとしては売りつくした過去の曲がApple Musicのおかげで突如誰かを潤わせている可能性もあるんじゃないかと。
そんな夢のある話もApple Musicには転がっているかもしれない。知らんけど。
結論(こんな人にオススメ)
以上、いろいろあるけど、こんな人にはApple Music絶対オススメです。
- 過去に音楽を聴き込んでいた時代がある
- 自分の好みの音がある程度あるし、広げてみたいとも思っている
- 話題の新人やヒットチャートも少しはチェックしたい
- 月に1,000円以上CDに使っている
こういう人であれば、月980円以上の価値を必ず得られるし、こんなに良いサービスが980円だなんてなんか恐縮だな申し訳ないなっていう今の自分の気持ちにも共感してもらえるはず。
自分はApple Musicに入っている曲でも、本当に好きなものはわざわざCDやレコードでも買ってるし、そうほうが精神衛生上よろしい。
以上、無料期間もあるわけだし、Apple Musicに加入しない理由が本当にないなと。
とはいえ、今自分が中高生だったとして、Apple Musicがあったらどうかと思うと実は微妙だったりする。
当時は2~3,000円のCD1枚を買うのに毎回清水の舞台から飛び降りてたし、ハズレもさんざん引いたけど、そのぶん1枚のアルバムに対する思い入れはめっちゃ強かった。
そういう音楽体験を若いときにやってきて、今Apple Musicに出会ってるからこそ、良い距離感で付き合えてる感じがする。
そうではなく、最初からApple Musicだけで聴いていると、音楽への思い入れや距離感というものはどうなっていくんだろう。
大枚はたいて買ったのになんかピンとこないアルバムを、意地でも気に入ってやるってな感じでずっと聴いて、そのうちなんかよく感じられてくる瞬間ってのがあの頃はあった。なんなら、子供にはわからない良さとかスルメ感はそうやって意地で聴いているうちにわかってくるものかもしれないし。
数秒ぐらいで検索して見つけた音を数十秒聴いてみてちょっと違うなと思って捨てる、ってのが今の基本になるから、スルメ感ってのはもう生まれないのではないか。
だから若者にはApple Musicオススメしたくないって気持ちもある。
30代以上である程度確立された音楽観をもってる上で 楽しんでもらいたい。
そういうサービスだと思いました。