森の掟

J-POPやメタルやフェスや音楽番組なんかの批評(という名の無益な墓掘り行為)

フジロック2024最終日にALI→キム・ゴードン→ターンスタイルを選んで連続正解大満足

今年もフジロックに1日だけ行きました。

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2012年ぐらいまでは毎年、前夜祭から月曜の朝までフルで参加してたんだけど、子供が生まれたりして身軽でなくなったこともあり、ここ数年は金土日のラインナップを眺めて検討し、ここだという1日に狙いを定めて日帰りで行くようになってる。

 

で、結局いつも金土日のうち、日曜に行ってる気がするんですよね。

そして1日の大半をフィールド・オブ・ヘブンで過ごしてる。

というのも、最終日のヘブンに出てくるアーティストって、多国籍で、ジャンルの幅も広くて、それでいてクオリティは保証されているのである。

なかなかグリーンやレッドの方まで下山する気になれないんだよね。

 

 

今年もそのつもりで自分内タイムテーブルを組んでいたんだけど、初っ端から入場に手間取って菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラールに間に合わないことが確定してしまうという痛恨のミス。

 

仕方なく外れ1位でbetcover!!を指名したんだけど、これはこれで前から見たかった人たちなので問題なし。

betcover!!は最近まで中国をツアーしていて、各地で盛り上がっている様子をSNSを通じて目にしていたんだけど、ライブ終了後にまわりで聞こえてきた言葉がぜんぶ中国語だったことでその人気をはじめて実感できた。

漠然と「海外で人気」っていうんじゃなく、中国とか特定の国で人気っていうあり方が現代っぽくておもしろい。

 

 

続いてホワイトステージに向かい、スペインのバスク地方からやってきたESNE BELTZAを見た。

調べたらこのバンドは2009年にフジロックにはじめて登場していて、そのときも見てた。

当時のフジロックには、マヌ・チャオの流れをくむラテン系ミクスチャーバンドが必ず何バンドか出演していたんだけど、彼らもそのひとつ。

音楽的にはレゲエ、スカ、ラテン・ロックなどがパンクの美学で統合されていて、思想的には左派民族主義っていう傾向があったよね。ESNE BELTZAもバスク独立運動のアクティビスト。

 

90年代末から00年代にかけてのロックフェスには、スカ〜スカコアのバンドがたくさん出ていて、全然知らないバンドでもあのビートを鳴らされたら無条件に身体が踊りだすっていう雰囲気があった。


そういえばロックフェスの王道のラインからスカが消えて久しいなと、みんなあんなに大好きだったはずなのにって思ってたら、ESNE BELTZAに続いてホワイトに登場したHEY-SMITHが見事にその路線を受け継いでいた。

 

 

昼ご飯を食べながら、ヘブンにてCHO CO PA CO CHO CO QUIN QUIN。

いろんなフェスに引っ張りだこなのは、細野晴臣の孫っていう話題性だけじゃなく、育ちのいい雑食性とでもいうべき音楽性によるものでしょう。

我が家が行きそうなフェスに呼ばれそう系なので、これからも何度か見る機会があると思う。今後が楽しみ。

 

 

アトミック・カフェトーク沖縄県知事玉城デニーが来るというので、チョコパを切り上げてアヴァロンへ。斎藤幸平・ジョー横溝津田大介とともに、ステージに立っているのを確認。

沖縄県知事っていう、超絶複雑な方程式を解かされる重い仕事に何年も取り組み続けられるパワーが、至近距離から感じ取れた。

それにしても小池百合子玉城デニーに言い放ったとされる差別発言はほんとに外道だなと、そしてその見下した態度が沖縄の現状にそのまま反映されてるんだよなと、そんなことも思い出した。

 

 

再びヘブンに戻って、インドネシアからやってきたALI。

個人的に今年のフジで見るのがもっとも楽しみだった一組。

 

クルアンビンをきっかけに世界的に注目を集めている、70年代のタイや東南アジア音楽のリバイバル

彼らはクルアンビンよりも踊れる要素が強いのと、東南アジアだけじゃなく、中東や北アフリカのエッセンスも入っているのが特徴的。

そう。ところどころ、エムドゥ・モクターのような北アフリカトゥアレグ族っぽいフレージングや、アルトゥン・ギュンのようなトルコのアナドル・ロックっぽいサイケデリック感が上手に取り入れられてるんだよね。

 

70年代のロックスターのような出で立ちで、渋く演奏するライブでの振る舞いもカッコよかった。オススメ。

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この日はずっと曇り空で、ときどき雨がパラつくものの、本降りになることはないという天気。

天気予報を見てある程度の雨は覚悟してたのが拍子抜けするほど。

 

 

舞茸天丼を手に入れて、THE JESUS AND MARY CHAINのためにホワイトへ。

最後の30分ほどを、PA席の真裏で音だけ聴きながら満喫。

そういえばこの日は、ジザメリ、ライド、オエイシスと、真夏のクリエイション祭りでもあったんだなと。

【知りたい】オアシス、プライマル、マイブラ……クリエイション・レコーズの伝説を振り返る (2018/01/05) 洋楽ニュース|音楽情報サイトrockinon.com(ロッキング・オン ドットコム)

 

 

またまたヘブンに戻り、日曜のヘブンらしいアクト、YIN YINへ。

オランダ出身なんだけど、日本を含む非西洋のエキゾチック要素を取り入れた音楽性が特徴。

個人的に好きなタイプなはずなんだけど、ちょっと体力的にしんどい時間帯だったこともあり、座って見てたらうたた寝してた。

戦場のメリークリスマス」をカバーする彼らのセンスにエキゾチシズムの匂いを勝手に感じ取ってしまって、テンションが下がったのかもしれない。

 

この時点で18時。

まだまだこの後に控えているあれこれに備えて、旧オレンジコートあたりの草地で本格的に仮眠。一日中晴れてる日だったらこの時間帯はかなり冷え込んで長袖必須な感じなんだけど、この日はまだ半袖で大丈夫だった。

 

小1時間ほど眠って、寝起きでふらふらとヘブンへ。

何ら過不足のない鉄壁のオリジナルファンクのレジェンド、ミーターズさんたちにより、眠気が一気に飛ぶ。

 

 

そしてここからが今日のハイライト。

ホワイトステージの前方に早めに陣取り、キム・ゴードンにむけて待機。

 

ソニック・ユースの中心人物として80年代から活躍する米オルタナティブ・ロック界の最重要人物が、70歳を超えてソロとして再始動。

しかも、発表された新曲が、現代的なトラップのビートにお得意の気だるく不穏なヴォーカルとノイズギターが乗ってくるという、自分の専門分野をフレッシュな要素を加えてアップデートした感じですばらしかったので、ライブにもそりゃ期待しますよね。

ホワイトステージ前方を占める往年のファンたちもみんなそんな感じだった。

 

20代ぐらいの、つまり孫世代のバンドを従えて登場したキム・ゴードンは、ときにギターを弾きながら、ときに手ぶらで、音源よりもさらにノイジーで暗黒な音を出し続け、その姿はとにかくめちゃくちゃにかっこよかった。

ギターの子のノイズの出し方なんてちょっとサーストン・ムーアっぽかったりもして。

 

フジロックでの映像は上がってなかったけど、これとかは近いので参考に。

 

 

キム・ゴードンにやられてしばらく呆然としていたんだけど、ちょっと時間があったのでミーハー心のままにグリーンステージに行ってちょっとだけノエル・ギャラガーを見て、またホワイトに戻る。

 

そして今日のお目当てその2、ターンスタイルが登場。

ハードコアの世界にはそんなに詳しくないんだけど、たぶんアメリカにおいては80年代が人気のピークで、そのあとはグランジやミクスチャーやポップパンクに発展的に分散していったため、彼らはハードコア勢としては何十年ぶりとなるヘッドライナー級バンドってことになると思う。

 

彼らのMVのYouTubeのコメント欄には、こんな感じの中年ハードコアファンからの喜びの声がたくさん。

 

 

みんな自分の年齢を書いてから感想を述べてるのが可笑しいんだけど、その気持ちはすごくよくわかるんだよね。

自分がキッズだった頃にハードコアやオルタナにガツンとやられたあの感じを、彼らは何十年ぶりにまた味わわせてくれたっていう。その喜びを表現するためには、まずは自分の年齢を書かざるを得ないっていう。

気持ちわかりすぎる。

 

ターンスタイルはとにかくまず曲がいい。単に激しいだけじゃなく、起伏やキャッチーなリフやフック、トンチキなネタ感のあるアイデアなどが1曲の中に詰め込めれており、それに加えて、なんていうかDIY感というか自由なバイブスがすごくあの頃を思い起こさせてくれる。

たとえば、ビースティ・ボーイズがハードコア曲をやってるときのあの感じとか、ガチのハードコアとガチのレゲエ曲を行ったり来たりするバッド・ブレインズのライブのあの感じとか、そういう、USハードコアの個人的に好きな面の継承者って感じがする。

 

 

ライブはとにかく楽しかった。助け合いありきの統制の取れたモッシュピット(とはいえタオルとかスニーカー片足とかスマホとかはみんな結構なくしてたけど)でニコニコしながらぶつかり合う。

最後にはステージに上っていいよってことになって、たぶん100人ぐらい上がった状態で「HOLIDAY」をやった。

ホワイトステージにアーティスト公認で乱入が発生したのはイギー・ポップ(ストゥージズ)以来だろう。

 

あとは家に帰るだけのギリギリの体力しか残ってなかったので、あら恋や250は断念。

お疲れ様でした。