森の掟

J-POPやメタルやフェスや音楽番組なんかの批評(という名の無益な墓掘り行為)

ミュージシャン/DJ目線で選んだサザンオールスターズ必聴プレイリスト21曲

2019年12月、突如としてサザンオールスターズの全アルバムと全シングル、さらにはメンバーのソロ作品までもが一気にAppleMusicやSpotifyといったサブスクリプションサービスに登場した。

 

サブスクのサービスが日本ではじまった当初は、他の大物アーティストと同様に音源を解禁してこなかったサザン。

しかし、松任谷由実井上陽水といった同時代の大物が続々と解禁になっていく流れに抗しきれなかったのか、解禁したほうがビジネス的においしいという見通しが立ったのか、ついに全面解禁という次第になった。

 

サザンといえば、日本人のほとんどが知ってる国民的バンドとして、「TSUNAMI」や「いとしのエリー」「真夏の果実」などの美しいバラードと、「勝手にシンドバッド」「マンピーのG★SPOT」「エロティカ・セブン」などのアッパーで猥雑な曲の2本柱のバンドって感じのイメージで捉えている人が多いんじゃないか。

いや、もはや「バンド」として認識されていないような気もする。良くも悪くも売れ線のポップスをやる大御所おじさんみたいな漠然としたイメージを持ってる人は多いんじゃないか。あまりに売れすぎて国民的な存在になりすぎて、逆に若い音楽好きからはナメられたりしてるかもしれない。

 

しかし、もともと青山学院大学の軽音サークル出身というインディーな出自をもつサザン。初期のアルバムは荒削りな魅力にあふれているし、また時代ごとに新しい音楽のモードを積極的に取り入れているミュージシャン好みのバンドでもある。

昭和歌謡からビッグビート、レゲエにテクノポップAORなど、曲ごとの振れ幅が異様に大きいことも特徴で、そんな多様な音楽的バックボーンのなかでも中心になっているのは、何といってもラテン音楽。正式準メンバーとしてパーカッショニストがいるっていうのも、もともとラテンをやるバンドだった名残りだったりする。

 

なので、偏見なしに素直な気持ちでアルバム単位で聴いていくと、おっ!と思うようなグルーヴィーな曲がちらほら出てくるんですよサザンって。

とはいえ、15枚のアルバムと55枚のシングルが一気にサブスク解禁されて、どこから聴けばよいのやらってなってる若い人は多いと思うので、そういった、ベースやドラムやパーカッションがかっこいい仕事をしてる曲でプレイリストを作ってみました。

 

TSUNAMI」や「いとしのエリー」じゃないほうの、「エロティカ・セブン」や「チャコの海岸物語」のほうでもない、ラテン音楽を中心にR&Bやファンクあたりの黒いサウンドを演奏する、サザンオールスターズというバンドの魅力をぎゅっと詰め込んだ21曲90分。

DJやってるときに近い気持ちで選曲してみた。

 

AppleMusicをご利用の方、どうぞお楽しみください(Spotify版は準備中)。

 

  1. 思い過ごしも恋のうち
    2ndアルバム『10ナンバーズ・からっと』(1979)に収録の高速ラテンナンバー。疾走感と哀愁の掛け算がたまらない、サザンで一番好きな曲。このアルバム以降サザンがこの路線をやらなくなってしまったのはほんとに惜しい。バラードが売れたためにそっちに音楽性を寄せていったと言われているが、しつこくこっち系もやりつづけていてくれたら、その後のJ-POPや邦ロックはずいぶん違ったものになっていたと思う。

  2. 匂艶 THE NIGHT CLUB
    1982年リリースの15thシングル。スラップベースとギターのカッティングがカッコいい上にホーンやストリングスまで入ってくる必殺ディスコチューン。後半サビ後のブレイクも効果的。

  3. HOTEL PACIFIC
    2000年リリース45thシングル。印象的な振り付けもあいまってライブの定番曲となった。サルサっぽいピアノ、ホーンやパーカッションが大活躍するラテンロックでありつつ、Aメロのフルートが昭和歌謡なメロを効果的に彩ってるキラーチューン。


  4. 8thアルバム『KAMAKURA』(1985年)収録。初期サザンには何曲かレゲエ曲があるんだけど、性急なビート感が印象的なこれが好き。ゆるくないレゲエはかっこいい。

  5. 赤い炎の女
    6thアルバム『綺麗』(1983年)に収録のラテンナンバー。地味な曲かもだけどギターソロなんかも哀愁があってかっこいいので好き。

  6. Hello My Love
    4thアルバム『ステレオ太陽族』(1981年)収録。アルバムのオープニングを飾るだけあってイントロがゴージャス。全体的にビッグバンド調のアレンジだけど要所要所でベースがかっこいい。

  7. 青い空の心(No me?More no!)
    1980年リリースの7thシングル「恋するマンスリー・デイ」のB面。アルバムには未収録なので気軽に聴けない時期が長かった。サザンはシングルをアルバムに入れない率が高く、B面曲はベストアルバムからも漏れるので入手困難になりがち。

  8. よどみ萎え、枯れて舞え
    7thアルバム『人気者で行こう』(1984年)に収録。AOR度が高いこのアルバムにおいて、リズム隊のキレのよさが目立つ。サビのハイハット、イントロや間奏のベースなど、かっこいいポイント多し。

  9. 女流詩人の哀歌
    5thアルバム『NUDE MAN』(1982年)収録。当プレイリスト上での前曲からのつながりがDJ的にハマった。似てる曲だといえばそれまでだけど。ハネたリズムに身を任せるだけで気持ちいい。

  10. タバコ・ロードにセクシーばあちゃん
    3rdアルバム『タイニイ・バブルス』(1980年)収録。もう1曲ハネたリズムの渋めのやつ。ベースに注目して聴いてみてください。

  11. 奥歯を食いしばれ
    2ndアルバム『10ナンバーズ・からっと』(1979)に収録。イントロのドラムと、続けて入ってくるピアノがとにかくかっこいい。サザンにおける最優秀ブレイクビーツ賞。

  12. ゆけ!!力道山
    34thシングル「クリスマス・ラブ (涙のあとには白い雪が降る)」のカップリング曲。ブレイクビーツ部門の準グランプリ。スライ&ザ・ファミリーストーン的というかレニー・クラヴィッツ的というか、ヴィンテージ感のあるファンク。

  13. チルダBABY
    6thアルバム『綺麗』(1983年)の冒頭を飾る曲。ベースラインが印象的なのと、クリーントーンのギターがいい仕事してる。

  14. 真昼の情景(このせまい野原いっぱい)
    8thアルバム『KAMAKURA』(1985年)収録。いかにも80年代な、アフリカっぽいコーラスと硬質なファンクアレンジ。人力だと思うけどループものの気持ちよさもあり。

  15. 愛の言霊 ~Spiritual Message~
    1996年リリースの37thシングル。どこか呪文のような癖になるサビのメロディと独特の言語感覚が炸裂してる。とはいえ通好みな曲なので、サザンの数あるシングルの中で4番目に売れたのがこれっていうのが意外。

  16. PARADISE
    13thアルバム『さくら』(1998)収録。「愛の言霊」のラインの曲として。
  17. MICO
    6thアルバム『綺麗』(1983年)収録。昭和30〜40年代にパンチの効いた歌唱で活躍した弘田三枝子のことを歌っているらしい。

  18. 気分しだいで責めないで
    2ndアルバム『10ナンバーズ・からっと』(1979)収録。「勝手にシンドバッド」スタイルの高速ラテンナンバー。こういう曲は初期に数曲しかないんだけどぜんぶ好き。イギリスでファンカラティーナが流行するよりも早かったんだからサザンはすごい。

  19. 神の島遥か国
    2005年リリース51thシングルの両A面。TOYOTA『MORE THAN BEST』CMソング。ニューオリンズのリズムと沖縄民謡をぶつけた野心作。それでいてサビはしっかり王道のJ-POPでまとめあげられている。

  20. 愛は花のように(Ole ! )
    9thアルバム『Southern All Stars』(1990)収録。ジプシー・キングスにインスパイアされたとおぼしきフラメンコな曲。歌詞はすべてスペイン語

  21. 勝手にシンドバッド
    1978年リリースの記念すべき1stシングル。2018年の紅白歌合戦でも演奏された、サザンの原点にして日本語ロックの歴史をつくった偉大な曲。日本語の歌い方に革命を起こしたっていう文脈で語られることが多いが、サンバのリズムでロックするキラーチューンとして、リリースから40年たっても全然フレッシュだからすごい。ベタだけどこの曲でプレイリストを締めくくりたい。