BARBEE BOYS(バービーボーイズ)を知っていますか。
30年前に東京ドームで単独公演をやったほど売れてたんだけど、驚くほど後の世に影響を与えていない気がする。
同時代のBOOWYとかブルーハーツとかが山ほどフォロワーを生んだのと比べると、BARBEE BOYSに憧れて音楽の道に進みましたってミュージシャンとか聞いたことないし、BARBEE BOYSの楽曲にインスパイアされた映画とか小説とかマンガとかも見たことない(あったらごめん)。
売れたのは売れたがあくまで流行歌として売れただけであって、音楽性が薄っぺらいから忘れ去られたんじゃないか、というパターンはよくあるけど、BARBEE BOYSに関しては違うと思う。まったくあたらないとおもいますよ(スガ官房長官ふうに)。
逆に、やってることがオリジナリティの塊すぎて、誰もマネできなかったんじゃなかろうかと。
だいたい男女がほぼ同じ比率でかけあいでリードボーカルをとるバンドってなると、日本はおろか世界的にもあまりなさそう。
BOOWYとかブルーハーツには、実際のスゴさとは別に、自分たちにもできるかも!って思わせる感じがあったしカリスマだけど身近な感じがあったけど、BARBEE BOYSは中高生のバンドマンの憧れをかきたてるものが皆無だったよね。
それに、日本のロックを語る文脈といえば、当時なんて特にロッキング・オン的な語り口が幅を利かせていたわけで、そうなると自分語りで内省的な人たちのほうが乗っかりやすい。
享楽的な男女の駆け引きの歌、騙し騙されな世界ばかり歌っていたBARBEE BOYSは、ちょっとそういう文脈では扱ってもらいづらい。また解散後も語り継がれるような伝説とかもないし、まあ文字になりづらいバンドってことだわな。
おそらく当時のBARBEE BOYSのメインの客層も、ブルーハーツを正座して聴くようなまじめで青臭い層ではなかったであろう。もっと大人だったはず。
で大人な分、音楽に対して過剰な思い入れもなく淡々としていたんじゃなかろうか。なので解散後はわりとあっさりBARBEE BOYSのことを忘れた。
そういうファン層はいつまでも終わったバンドをネチネチ語るタイプじゃないため、後世に語り継ぐこともしない。
フォロワーがいない、語られる言葉もない、語り継ぐ人もいない、となるとなかなか後世には残りづらいってのも仕方がないかなと。
でもですね、BARBEE BOYSはほんとにいいバンドなのです。
いろいろあるけど、特に強調したいのがギタリストいまみちともたかのスゴさ。
80年代と90年代のギターの役割の変化
90年代のロックバンドのギタリストって、歪ませた音色でジャカジャカいくスタイルが一般的だと思う。ギターは楽曲の音像のなかでベターッと空間を埋めていく、厚みをだす役割。日本だと奥田民生、 海外だとオアシスとかがわかりやすい例。
一方、80年代のギターは歪んでないクリーンな音色で、打楽器っぽく機能していることが多い。 サザンでもボウイでもいいけど、 80年代のロックバンドの音像って、ギターがどこで鳴ってるか一瞬わからなかったりする。
BARBEE BOYSのいまみちともたかも典型的にこちらのスタイルのギタリスト。
そういう意味で、わかりやすいギターヒーロー的な人ではないんだけど、あの布袋寅泰がライバル視していたというほどの凄腕なのです。演奏のキレ、そして独創的なフレーズ。
そのスゴさはパッと聴きでは伝わりづらいんだけど、ギターのフレーズに耳をそばだててみると、 かなり異様なことをしていることに気づくであろう。
具体的に聴いてみましょう
たとえばいちばん有名なこの曲とかどうですか。
印象的なイントロのフレーズ、右耳と左耳でほぼ同じフレーズを別のテイクで弾いてる。さらにコードの変わり目ごとにジャーンって音も入ってる。
Aメロになると、真ん中左寄りで8分音符を刻む音、右端でツチャッ、チャーララってフレーズ。「激しいときを夢見てたい夜」のところで突然もう一本入ってくるよね。
Bメロは一旦オルガンに主導権を渡しつつ、サビ直前でまた新しい音色のギターが登場。
でサビ。ここでも右耳と左耳からそれぞれ別のギターが聴こえてくる。「close your eyes」のところでまたトリッキーな別の音色が登場するという具合。
とにかくものすごく細かくて手のこんだ仕事だってことがわかってもらえると思います。この曲に限らず、BARBEE BOYSにおいては万事がこの調子である。
一聴しただけではシンプルで隙間の多い編曲に感じるんだけど、個々の楽器のパートに注目してみると、特にギターがいろんなことやってることに気づく。
自分ももともと中学生の頃に何気なく聴いていたのを、自分が楽器やるようになってから聴き直したらなんじゃこりゃーってなった。その感動をみんなに届けたくて、今回これを書きました。
とにかくBARBEE BOYSはすげーいいから聴いてほしい。
歌詞の性格の悪さやキャッチーかつヒステリックなメロディもたまらないし、アルバムを追うごとにKONTAと杏子という2人のボーカリストのクセの強さが仕上がっていくさまも味わいどころ。
BARBEE BOYSのそういう良さはすでに知ってるよナメんなという方には、ギターに注目して聴き直すことをオススメします。また印象が違ってくると思う。
最後に東京事変によるBARBEE BOYSのカバーを貼っとく。