昔のロックスターの方々は説教したくなるほどモテすぎて困っていた
90年代前半ぐらいまで、ロックバンドは今よりもっとオラついていた。
メガネをかけたメンバーなんていなかった。
歌詞の世界観もまるで違っていて、「尻軽女にモテて困惑」みたいな曲がすごく多かった。とにかく当時ロックをやってる男はモテたんだと思う。
困惑するだけならまだしも、しまいには説教しはじめる歌もたくさんあった。
数をこなすのと もててることとは
同じじゃないんだぜ 尻軽TEENAGE GIRL
愛だ恋だを上手に使い分けてみても
先も中身もないのさ 尻が軽いだけじゃ
COMPLEX「PRETTY DOLL」
華やいだ街の裏側じゃいつも
笑われているんだぜ
金で買われたお飾りのPRETTY
奴らの仲間にはなれない
大沢誉志幸「ゴーゴーヘブン」
いいかよく聞け表通りで お前は確かに女神(ビーナス)
だけどひとつはいった路地では笑われてるんだぜ
ライブ映像とかアー写を見てもらえばわかるように、当時のロックスターの方々は、そりゃモテるわなという人種。
なんていうか、オスとして強そう。
スクールカーストの最上位にいる男子が、地元の不良のセンパイに憧れてバンドを始める感じ。
だから元々モテただろうし、(自分なんかには想像もつかない世界の話だけど)「モテすぎてなんか腹立つ」とか「そんなに簡単に股開くなよ」って気持ちになったとしてもおかしくない。
それが素直に歌詞に出る。
あの奥田民生にしても、UNICORNのど初期にはその匂いを感じる。
エレキギターがメガネくんの一発逆転の武器に
さっきも言ったけど、昔はロックバンドにメガネかけたメンバーなんていなかった。
2018年の青少年には想像もつかないかもだけど、くるりやナンバーガールが出てきたとき、「メガネくんがボーカル!?まじか」ってのがちょっとした事件として受け止められてたんだから。
それが90年代後半ぐらいから、いわゆる現在の「邦ロック」といわれる流れにつながるバンドたちが登場してきて、バンドやるような男の子の人種が変わってきた。
スクールカーストの下層とまでは言わないまでもトップではない。
趣味が合う数少ない友達と帰宅部でつるむような子らがギターを手にするようになった。
不良のセンパイに憧れたわけじゃなく、むしろそういうやつらを見返すために。
はい。自分も完全にそっち側の人間。
いつからロックって文化系のナヨナヨ眼鏡がやる音楽になったの?
不良のセンパイに憧れる子らはどこへ
じゃあ、90年代後半、不良のセンパイに憧れる子らはどこにいったのかというと、実はヴィジュアル系でした。
その証拠に、尻軽な女子にモテて困るっていう例のノリがロックバンドから消えたのと入れ替わるように、ヴィジュアル系の歌詞に登場するようになった。
ただしV系なので語彙が独特になり、おもに「淫乱」と表現されてる。
具体的にいうと黒夢とか。
さすがにヒムロックや吉川晃司あにきのように説教まではしないけど、群がる女どもを軽蔑するっていうスタンスをとってるし、そういうツンな態度がまたさらにモテを呼び込むというループが発生していた模様。
同じ時代にバンドやってたはずなのに、こうも景色が違うものかと。
不良のセンパイに憧れる子らの2018年
さらに時代が進んで2018年、不良のセンパイに憧れる子らはどんな音楽をやっているのかというと、そりゃもうヒップホップ一択であろう。
そしてビートロックには「尻軽」、V系には「淫乱」と呼ばれていた女子たちは、ラッパーたちに「ビッチ」と呼ばれていますね。
特に般若さんやBAD HOPさんといったあたりのコワモテの人がビッチを非難するリリックをよく見かける。
(ただややこしいのが、このあたりの人たちは女友達とか女性ファンに対してビッチ呼ばわりすることもあるので、文脈から読み取る必要がある)
2WIN (T-PABLOW × YZERR) / FIRE BURN - Official Video -
いつの世も、強いオスがやる音楽はモテすぎて困ってるし、尻軽を軽蔑してきたんだなということがよくわかる。
そして強いオスがやらなくなったジャンルはその後、ハイエナ的なオスのものになるんだけど、ハイエナは特にモテない。