森の掟

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【保存版】フレディ・マーキュリー追悼コンサートの味わいどころ

映画「ボヘミアン・ラプソディ」が公開され、世界中でフレディ・マーキュリーへの関心が高まっていますね。

映画としてもすごくいい出来で、あの場面とかあの場面とか涙なしには観られなかった。

これから世界中で大ヒットすること間違いなし。

映画をきっかけに何度めかのクイーン再評価の機運が高まって、映像や楽曲はYoutubeなんかで過去最高レベルでめっちゃ検索されてるだろうし、あらためて良さを知る人が増えまくることでしょう。

 

We Will Rock You」だとか「We Are The Champions」をはじめ、クイーンの曲だと知らないままに認知されてるケースがとても多いだろうけど、はじめて曲と人が一致する的なことが起こってくれたらと思う。

 

でですね、この機会についでに知ってほしいものがあります。

それが、1992年に開催された「フレディ・マーキュリー追悼コンサート」。

 

フレディ・マーキュリーは1991年11月24日にエイズによる気管支炎のため亡くなるわけだけど(ネタバレ)、その翌年4月、ロンドンのウェンブリー・スタジアムで大規模に追悼コンサートが行われている。

 

そう、ウェンブリー・スタジアムといえば、クイーンが見事な復活を遂げた1985年のあのLIVE AIDが開催されたのと同じ場所。

その場所に、フレディ亡き後のクイーンの3人のメンバーが立ち、フレディの代わりに縁のある大物アーティストが入れ代わり立ち代わり登場してクイーンの曲を歌うという。

ちなみにコンサートの収益はエイズと戦う財団に寄付された。

 

この追悼コンサートの様子は当時日本でもWOWOWで放送された。

中2の自分にとってクイーンはほぼ知らないバンドだったんだけど、出演したメタリカとかガンズ・アンド・ローゼズ目当てでこの追悼コンサートを観たんだった。

フレディ・マーキュリーがどんな人なのかは全然わかってなかったけど、そうそうたる面々が集まって、ものすごい人数の観客と一緒に追悼するような、それだけすごい人だったんだなってことはよくわかった。

 

幸いなことに、この追悼コンサートは映像化され、またYoutubeに公式が何曲か公開している。 

今日はこのコンサートの見どころをYoutubeを貼りつつ紹介していこうと思います。

映画を観た後の余韻にひたりながらでも、映画を観る前の予習としてでも楽しめます。

 

前半 

前半はいろんなバンドが数曲ずつ自分たちの持ち曲を演奏していった。

各バンドの出番前にクイーンのメンバーが一人ずつ出てきてひとこと紹介のMCをする。

 メタリカ

まずトップバッターで登場したのが、メタリカ

1991年にリリースした通称「ブラック・アルバム」という大名盤が全米ナンバーワンになり、ハードロック/ヘヴィメタルにとどまらずロック界全体に大きなインパクトを与えたばかりのメタリカ

メタルの中でもより速くて重くて激しいスラッシュメタルというジャンルを代表する存在にして、クイーンを含む幅広い音楽的ルーツを持っているメタリカ

 

そのメタリカがまず自分たちの曲を3曲やった。

 

クイーンといえば美しいバラードのバンドだと思っている方々からすると、なんでこんなやかましいバンドが追悼コンサートに!?ってびっくりするかもしれないけど、クイーンはバラードもいいけどそれと同じぐらい、ホットなハードロック曲もいいんです。

その路線の継承者として、1991年の飛ぶ鳥を落とす勢いのメタリカはこのコンサートのトップバッターにふさわしいと思う。

 

その証拠に、観客のこの盛り上がりっぷり。

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エクストリーム

次に登場したのが、エクストリームっていうアメリカのバンド。

当時はファンク・メタルなんて表現された、若干ファンキーなハードロックがウリ。

ギターのヌーノ・ベッテンコートという人がめちゃめちゃギター上手でおまけに男前ってことで、日本でも結構人気あった。

ハードロックのバンドにしては上品で学歴高そうなところがクイーンに通じるよね。冒頭、クイーンのブライアン・メイが地球上のどのバンドよりもクイーンっぽいって紹介してた(たぶん)のもうなずける。

 

そのエクストリームは自分たちの曲ではなく、クイーンの曲をメドレー形式でたくさんカバーした。コーラスも達者だし完成度かなり高いし、選曲もほんとにクイーン大好きなんだろうなってわかる。

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デフ・レパード

ここまでアメリカ勢が続いたけど、ここでやっと地元イギリスのバンドが登場。

80年代に全世界で1千万枚単位でアルバムを売ったモンスターバンド、デフ・レパード

ハードロックをベースにした、分厚いコーラスのキラキラした曲っていう点で、クイーンのある部分の正統な後継者って感じがするよね。 

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ボブ・ゲルドフ

くだんのLIVE AIDを企画したアイルランドの人。LIVE AIDの成功によりナイトの称号を授かったそうな。

その後もさまざまなチャリティー関係の活動に関わっていくけど、ミュージシャンとしての活動は正直あまりよく知らない。

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スパイナル・タップ

架空のバンドを描いたフェイク・ドキュメンタリーの映画「スパイナル・タップ」というのがあって、その主人公たち。

60年代に結成されその後の時代の流れにもまれながらもサヴァイブしていくバンドの様子を描いた映画は、今もカルト的な人気がある。ハードロックあるあるが満載の楽しい映画。

バンドとしてのスパイナル・タップは、フェイク・ドキュメンタリーの映画の中の存在だったけど映画から飛び出して普通にアルバムをリリースしたりライブをやったりしてるという、なんか説明が難しい存在だな。日本でいう「くず」みたいなことか。

しかし追悼コンサートにこの人らが出てくるってところがいかにもイギリス人のセンスって感じがする。変な王様みたいな衣装で出てくるし。 

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U2

直近だとiTunesに勝手にアルバムがプリインストールされてて悪評だったことで有名だけど、アイルランドが生んだ偉大なロックバンドなんです。

 1991年には壁が崩れて冷戦が終結したばかりの動乱のベルリンにわざわざ乗り込んでレコーディングしたアルバム「アクトン・ベイビー」をリリースし、音楽性がガラッと変わったばかりの時期。

この日のコンサートでは自分たちだけ別会場からの中継で参加するという、紅白の長渕剛みたいな立ち位置だった。何様って思うけどU2様だもんなーという。

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ガンズ・アンド・ローゼズ

このブログでも何度か言及してきた、アメリカの不良ハードロックバンド。

突然ですがガンズのドラマーの話 - 森の掟

 

B'zやTOKIOをはじめ、90年代J-POPの男性アーティストに音楽性でもファッションでも多大なる影響を与えた。

ドラッグ中毒だし素行不良だし攻撃的な曲が多いしでフレディ・マーキュリーとの接点なんてまるでなさそうに一見みえるけど、1991年にリリースした「ユーズ・ユア・イリュージョンⅠ&Ⅱ」というアルバムには、「ボヘミアン・ラプソディ」あたりの影響をすごく感じる壮大な曲がいくつも収録されており、意外と繊細かつ壮大な曲を作れるんだってことが判明している。

 

1991年以降は低迷したりメンバーチェンジしたり活動休止したり復活したりしてて、数年前からほぼオリジナルメンバーでまた活動し始めた。

つい最近、トランプ大統領が自分たちの曲をイベントで使うのをやめてくれと抗議したことでニュースになってた。

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このあと、南アフリカエイズのチャリティーコンサートと中継をつないだりエリザベス・テイラーのスピーチがあって、前半終了。

 

後半

ジョー・エリオット&スラッシュ&クイーン

先ほど登場したデフ・レパードのボーカリストと、ガンズのギタリストが、クイーンの3人とともに「タイ・ユア・マザー・ダウン」を演奏。

後半のスタートにふさわしい派手なハードロック曲。

スラッシュはもじゃもじゃ頭に上半身裸でギターはレスポールっていう、ものすごいキャラ立ちですが、四半世紀たった今でも同じスタイルを貫いてるからすごい。

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ロジャー・ダルトリー&トニー・アイオミ&クイーン

60年代から70年代にかけてイギリスを代表するバンドだったザ・フーのボーカリストであるロジャー・ダルトリー。あのウッドストックにも出演してたよね。

そしてブラック・サバスのギタリストであるトニー・アイオミ。つまりオジー・オズボーンの元同僚。サバスはいわゆるヘヴィメタルという音楽の原型をほとんど最初に作り上げた、めちゃめちゃ偉大なバンドですよ。

ブラック・サバスの曲の一部とザ・フーの曲の一部をチラッと弾いてから、みんなで「アイ・ウォント・イット・オール」へ。1989年つまりかなり晩年にリリースされた曲。

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ゲイリー・シェローン&トニー・アイオミ&クイーン

ゲイリーは先ほど登場したエクストリームのボーカリスト。エクストリームの解散後はヴァン・ヘイレンに加入することになる。あんまりロックスター然とした感じではないけど、たぶん性格のいいがんばりやさんなんだと思う。

当時エクストリームはデビュー3年目ぐらいの若手。この日の出演者の中ではかなりの若輩者なわけで、いかに彼らがブライアンたちに気に入られて抜擢されたかってことだよな。

トニー・アイオミもこの次まで計3曲に参加。この時点でもだいぶベテランだけど、でも今から四半世紀前はまだまだ若いよな。今や完全におじいちゃんだもんな。

演奏したのは、LIVE AIDでもやった「ハンマー・トゥー・フォール」。

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ジェームズ・ヘットフィールド&トニー・アイオミ&クイーン

メタリカのギター・ボーカルのジェームズが登場して「ストーン・コールド・クレイジー」を熱唱。

ワルそうなギターリフはトニー・アイオミの得意な感じのやつだし、歌もとってもジェームズに似合ってる。この追悼コンサートの中でもかなりハマってるカバーだと思います。

あと普段はギターを弾きながら歌ってるジェームズがハンドマイクっていう姿もめっちゃ貴重。

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ロバート・プラント&クイーン

続いて登場したのが、レッド・ツェッペリンロバート・プラント

ツェッペリンといえば、クイーンと並ぶ70年代の英国ハードロックを代表するバンドで、ドラマーの死などがあり解散していたが、例のLIVE AIDのときに一回限りで再結成していた。

この日はまずクイーンの中でもエキゾチックで神秘的な「イニュエンドウ」を選んで歌った。のはいんだけど、なぜか声が出てなくて残念な出来。

そこからツェッペリンの曲を2曲やって、クイーンの「愛という名の欲望(Crazy Little Thing Called Love)」を。

しかし最初の「イニュエンドウ」はこの人のキャラというかツェッペリンのイメージにぴったりだなと思うけど、「愛という名の欲望」はどうだろうか。ちょっと軽快でお茶目すぎないか。決めのところで腰を振ったりしてるけど大丈夫か。

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ブライアン・メイ

天文学者になりたかったクイーンのギタリスト、ブライアン・メイが、クイーンの最後のアルバムに収録されている自作の「トゥー・マッチ・ラブ・ウィル・キルユー」をエレピの弾き語りで歌った。

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ポール・ヤング

80年代にイギリスで人気があったシンガーってことぐらいしか正直知らないけど、いい声してますね。

歌ったのは「レディオ・ガガ」。レディー・ガガの芸名の元ネタ。

LIVE AIDでも演奏された曲で、つくったのはドラムのロジャー・テイラー

歌詞がまたすごくいいんだこれが。思春期にラジオめっちゃ聴いてた人間にはたまらないラジオ賛歌。

サビで手を2発叩くやつを観客全員が揃ってやってるところも注目。

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デヴィッド・ボウイアニー・レノックス

フレディ・マーキュリーとボウイのデュエット曲「アンダー・プレッシャー」を歌ったのは、メイクがめっちゃインパクトあるユーリズミックスアニー・レノックス

この時期のデヴィッド・ボウイは、ティン・マシーンというバンドを結成し、過去の曲はやらないと宣言してた。時代の変わり目でいろいろ試行錯誤してたんだと思う。

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ボウイはこの日「アンダー・プレッシャー」に続き、モット・ザ・フープルに提供した「すべての若き野郎ども(オール・ザ・ヤング・デューズ)」と、ボウイの「チェンジズ」をクイーンやモット・ザ・フープルのメンバーと一緒に演奏。

過去の曲やらないって言ってたけどチャリティーは別枠なのか。

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ジョージ・マイケル

ワム!からソロになったジョージ・マイケルは、「'39」「輝ける日々」「愛にすべてを(Somebody To Love)」を歌った。

 

複雑なバックボーンだったりゲイだったり、フレディと相通じる部分が多いこの人。実際クイーンの大ファンだったというし、この日の「愛にすべてを」では歌声もめっちゃ似てる。

 

後にブライアン・メイが語ったところによると、フレディ亡き後のクイーンにジョージ・マイケルをボーカルとして迎え入れてはどうかとまわりから勧められたそうな。

確かにこの「愛にすべてを」はすばらしい。

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エルトン・ジョンアクセル・ローズ

生前フレディ・マーキュリーと仲が良かったという、サー・エルトン・ジョン

同性婚をしたことでも有名。

この日は大ネタ中の大ネタ「ボヘミアン・ラプソディ」を歌う。

途中のオペラ部分はレコードの音源をそのまま使用し、後半のギターソロに入るところでパイロが爆発し、短めのマイクスタンドを手に回転しながらガンズのアクセル・ローズが登場。そのままギターソロ明けのパートを歌う。

で最後は2人で仲良く歌い上げて終了。

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エルトン・ジョンは「ショー・マスト・ゴー・オン」を。

しかしさっきも言ったけど四半世紀前だからみんな若いわー。当時すでにベテランだったけど、それでも若い。最近のエルトン・ジョンは映画「キングスマン:ゴールデン・サークル」に本人役で出演して大活躍してるところを観られるけど、もうだいぶおじいちゃんだもんな。

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アクセル・ローズは「ウィー・ウィル・ロック・ユー」を。

声質とかキャラには合ってる選曲だと思ったけど、あらためて観たらあんまりちゃんと歌いこなせてないな。てゆうか曲としてこれかなり変だし、フレディ以外が歌うのかなり難しいと思う。

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ライザ・ミネリ

そしてトリはライザ・ミネリ

フレディが生前すごく憧れていた大女優(映画の中でフレディの部屋に貼られていたポスターはこの人だった‥はず)が、「伝説のチャンピオン(We Are The Champions)」を高らかに歌い上げた。

出演者もみんな出てきて大団円って感じに。

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 何曲かはしょったけど、だいたい紹介できたと思います。

 

この日集まったメンツを見てると、クイーンの音楽がどれだけ影響を与えていたかわかる。影響の深さとともに、幅広さね。

ボヘミアン・ラプソディ」がリリースされたとき、正直ファンはみんな戸惑ったらしい。クイーンどうしちゃったんだって。

 われわれは後追い世代なので、すでに所与のものとしてクイーンに接しているけど、リアルタイムだとそうはいかないだろう。

映画の中でも何度かメンバーが言ってたけど、同じことは二度やらないのがクイーンなんでしょうね。

ハードロックを軸に、オペラだったりディスコだったりいろんなことを試してきたからこそ、追悼コンサートにこれだけの幅広いアーティストが参加することになったんだろう。

 

そしてフレディが亡くなってから四半世紀前たっても、いまだにCMやいろんなところでクイーンの曲は使われまくっている。

 やっぱりすごいわ。