「LL教室の試験に出ない90年代シリーズ 1998年」をふりかえって

構成作家/ミュージシャンの森野誠一、批評家/DJ/音楽ライターの矢野利裕、そしてわたくしハシノイチロウの3人で結成した、DJ、評論、イベントなどを通じて音楽を語るユニット「LL教室」。

 

2018年2月11日(日)荻窪ベルベットサンにて、かなり久々にトークイベントをやりました。

題して「LL教室の試験に出ない90年代シリーズ 1998年」。

 

以前にイベントで90年代J-POPを扱ったところ非常に盛り上がり、その反面、ちょっと話が広がりすぎて時間が全然足りなくなるという事態になったため、90年代を1年ごとに取り上げてシリーズでやっていこうということに。

今回はその1回目として、日本でCDが最も売れた年である1998年に焦点をあててみた。

 

1998年とはどんな年だったか

こちらが、当日イベントで投影した資料。これだけ見ても何も伝わらないかと思うけど、1998年の世相やオリコンCDランキング(シングル/アルバム)を整理してたり、イベントの流れは掴んでいただけるかも。

 

 

LL教室3人にとっての1998年の話になったんだけど、自分の1998年はこちらにわりと詳しく書いてますので、よかったらどうぞ。

guatarro.hatenablog.com

まあ要するに、大学生で就活せずバンドに精を出し、CD屋でバイトしていたわけだけど、CDバブルの狂乱を売る側から体験したのはおもしろかったなという話。

 

ゲストの日高央さん

ゲストの日高央(ヒダカトオル)さん(BEAT CRUSADERS〜THE STARBEMS)は、当時ビークルの活動を始めつつ、レコード会社の社員として働いてもいたという。

 

今回LL教室としては、1998年の状況をCDバブルという側面ではなく、インディーズシーンから見つめたり、その後のJ-POPに与えた影響といった面から捉え直したりといったことをしたかったわけで、そういった意味で日高さん以上にふさわしいゲストもいなかったんじゃないかと思うほど。

実際、当時の状況についてかなり貴重な証言(ほぼオフレコ)を伺うことができた。

 

それにしても日高さんはめちゃめちゃクレバーで、めちゃめちゃサービス精神旺盛で、めちゃめちゃいろんなジャンルに精通してる、すごいセンパイでした。

脱線や暴走に見えたかもしれないけど、われわれLL教室に手綱を操る力量が足りないことを瞬時に察知していただいた上で、絶妙のバランス感覚でセルフに硬軟おりまぜていただけたような感じがしていて、こちらとしてはおんぶにだっこだったなーと反省しきり。

 

感想

コアな部分はイベントに来た人だけのお楽しみなんだけど、公開しても差し障りのないあたりで個人的に印象に残っているのはこのあたり。

 

  • 1998年は「インディーズ」といわれる音楽の中身が変わってきた時期。それまでのギターポップ勢が落ち着いてきて、パンク/メロコアが盛り上がっていくあたり(そっち系フェスの代表である「AIR JAM」は1997年にスタートしている)。
  • パンク/メロコアには(一部を除き)あまり派閥みたいなものはなく、また80年代までのハードコアパンクシーンにあったような暴力とか上下関係みたいなものもほとんどなかった。人脈的にもほぼ断絶してる。
  • 日高さんの世代で今も現役で音楽で食っている人のタフさ。1998年頃をピークに、音楽業界全体で経済状況が悪化している中で、みんなそれぞれがんばっている。声優やアニメ界の仕事が増えている。
  • YOUR SONG IS GOODband apartといった、一聴するとパンクでもラウドでもないバンドが、そっち系にカテゴライズされてる謎について。現在の音楽性にたどり着くまでの経緯や人脈を知ると納得。
  • 「98年の世代」といわれる、くるりナンバーガールスーパーカーあたりのバンドと、それ以前のバンドマンの違いについて。ハシノ説では、それまでのバンドマン(バンドブーム期とか)は、クラスの中心人物とか元々モテそうなタイプが多いけど、このあたりから変わってきてる。クラスの中で、底辺とまではいかなくても、一人でひっそりしてるようなタイプに移ってきたのではないか。モテたいやつはもうバンドなんかやってなくて、当時ならDJだし、今ならフリースタイルダンジョンに憧れてる。
  • 当時から今までいろんなバンドがブレイクするのを見てきた中で、フェスなどで変な人気のつき方をすると危ないなと感じていたとのこと。音楽性や楽曲ではなく、キャラとかルックスだけで持ち上げられるとあまりよくないファンに消費されてしまう。そうやって消えていったバンドもわりといるとのこと。しかしメジャーで売れることを引き受けるというのはそういうことでもある。難しい。
  • それが日本の現状なのだとしたら、この先どんどん業界が細っていく中で未来はどうなるか。結局は音楽に対する国民性の違いが大きく左右するのではないか。欧米みたいにもっと日常の中に音楽があって、道端でふつうに踊ってるような国と日本の違い。さらに印税の配分とか興行のシステムなど、日本独自の仕組みが壁になってる面も。

 

 

最後の、この先の音楽シーンどうなるかっていう話だけど、たしかに日本独自のマインドや文化や制度がマイナスに働いてると思うし、もしかしたら今後ますますそっち方向に進むかもしれない。

でも、さらにその先、もしかしたら20年後とかかもしれないけど、個人的にはおもしろくなってくるような気がしている。

イベントでも話したけど、今後日本が少子化グローバル化が進むのはもう間違いないわけで、そうなると日本の文化の現れ方もだいぶ変わってくるのではないか。

群馬のブラジルタウンや池袋のチャイナタウンがすでにそうであるように、この先の日本全体のノリがラテンだったりアジアに寄ってくる可能性が高いと思ってて。

そうなったときのJ-POPがどうなってるか、ちょっと楽しみ。

 

次回予告

LL教室の試験に出ない90年代J-POPシリーズ、次回は2018年4月1日(日)に開催します。

場所は引き続き荻窪ベルベットサン。

ゲストは近日発表予定。

 

また90年代のなかから1年をピックアップして、ゲストとともに振り返っていこうと思っていますので、ぜひお越しください。はっきりいってこの記事から伝わるイベントの魅力は1割ぐらい。来たほうが絶対いいです。