森の掟

J-POPやメタルやフェスや音楽番組なんかの批評(という名の無益な墓掘り行為)

「おんな城主 直虎」は大河じゃなくて"小川ドラマ"の予感

 先週こういう記事を書いて、「おんな城主 直虎」について妄想をふくらませていた者です。

guatarro.hatenablog.com

いろいろ書いたけど一言でいえば基本的に半信半疑の姿勢。
いい方向に転べば、大河ドラマに新しい風を吹きこんでくれる作品になるかもしれないなと思ったし、そうでなければ、地味だしヌルいしって感じの作品で終わるかもしれないなと。

 

そんな気持ちで第一話を観終えての感想。

戦国時代っていうと、日本の歴史上でも屈指の有名人が全国各地に同時多発でたくさん出てきた時代。そして、鉄砲・西洋文明・茶・歌舞伎・法律・土木など、今につながる文化の流れが作られた時代。そして江戸時代以降の日本人が数百年間いろんな物語を通じて慣れ親しんできた時代。

1560年〜1615年までの50年ほどは日本のどこを切り取っても、キャラ立ちした人物たちがしのぎを削って、新しい価値観に出会い、過酷な運命に翻弄されてるわけで、これほど大河ドラマにしたくなる時代はほかに幕末ぐらいしか見当たらないわけで。

なので大河ドラマはほっとくと幕末と戦国時代を交互にやってたまに源平合戦をやるだけで十分になりがち。視聴者もそれを求めてるし。あえてそれ以外の時代に挑戦した作品といえば「北条時宗」とかごく一部。

 

その点、「おんな城主 直虎」も、戦国時代もののひとつとして、時代設定としては安全パイを切ってきた感じなのかなと最初は思った。

でもよくよくキャストを見てみると、おそろしく地味なのでびっくりした。これたぶん前半のボスキャラは今川義元だわ。桶狭間の戦いによって世間の認知度がかろうじてあるレベルの今川義元が、ドラマ前半の最大の有名人っていう事態になりそう。

織田・豊臣・徳川・上杉・真田・石田・伊達あたりの主役級がこれでもかと登場した「真田丸」の派手さと比べると、これはかなりのこと。

 

結構な挑戦になるとは思うけど、大河ドラマっぽさのカタチだけなぞって中身のない作品になるぐらいなら、地味さを逆手に取ったようなアプローチでやってくれるほうが、見ごたえありそうだとも思う。
山奥でひっそり暮らしていた豪族が、世界の片隅で翻弄されていくお話をしっかり見せてくれれば。

脚本家は朝ドラの「ごちそうさん」を書いた人だそうで、この地味さを丁寧にやってくれるのではないかと期待したい。

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さっそく第一話からそういったところは散見されてる。歴史に名を残すような偉大な人はいなくて、ただただ必死に生きてる地方豪族の姿があった。そういったふつうの人たちの内輪もめをじっくり見せてもらえるドラマなんだなと理解したわけ。それはそれでおもしろそうなので、期待しておく。

 

ただ、もしその路線で成功したとして、それって大河ドラマって呼べるのかという話になってくる。作品の出来不出来とは別に、そこは気になる。

教科書に載るような大事件や、現代人が「尊敬する人物」に名前を挙げるような偉人の大活躍を描いてこその大河ドラマなんじゃないかと、自分なんかはそう思っているクチなもんで、第一話を観てると、なんか朝ドラみたいだなという感じがした。

 

でももしあえてそこをやらないのであれば、それはそれでいいけどね。大河っていうスケール感はなくても、すごくおもしろい小川みたいなものを丁寧につくってくれればいい。

そしたら今年はもう「真田丸」のような怒涛の展開(武田滅亡〜本能寺〜小田原攻めとか)を求めるのはやめて、じっくり地方豪族の右往左往を味わおうって腹をくくれるから。

よろしくお願いします。